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[11899] 第13章:そして舞台は郵政選挙へ返信 削除
2009/7/11 (土) 21:24:39 徳翁導誉

▼▲ 第13章:そして舞台は郵政選挙へ ▲▼

こうして息を吹き返した民主党が、「政権交代可能な2大政党制」の実現へ向け、
着実に邁進していくかと言えば、現実はなかなかそう上手くは進みません・・・・
自民党が失態を犯し、民主党がそれを攻撃しようとすると、
民主党の方が蹴躓き、結局は自民党への追求が中途半端に終わる。
そんな失敗を繰り返していく内に、民主党は『ブーメラン政党』という、
ありがたくない異名を、マスコミから頂戴してしまいます(笑)。
せっかく衆院選で勝利した代表の菅も、このブーメランで自滅してしまいます。
菅のブーメランは「年金未納問題」でした。

年金改革法案が国会で議論されている最中、
現職大臣である中川昭一、麻生太郎、石破茂の3名が、
年金の未納がある事が発覚し、菅はこれを『未納3兄弟』と名付けて批判。
しかし数日後には、菅自身の年金未納も発覚した為に、
その後もぞろぞろ出てくる閣僚の年金未納に対して、追求の手が緩んでしまいます。
官房長官の福田康夫が、この件で長官職を辞職すると、
菅も代表の座を降りざるを得なくなり、結局辞任に追い込まれました。
当時から菅は、「自分の未納は役所側のミスだ」と主張しますが、
あの時の状況下では全く耳を貸して貰えず、却って見苦しい言い訳の如く写りましたが、
その後、菅の主張通り「役所側のミス」である事が判明しますが、既に後の祭りでした。
とは言え、この件で菅をあまり同情できないのは、
「未納3兄弟」の1人として追求した石破も、菅と同じケースだったんですよね。
また、あまりにパフォーマンスへ走りすぎて、
小泉の「厚生年金の違法加入」発覚など、攻撃すべき時を逸しているのが・・・・
その点、この官房長官辞任時も、後の首相辞任時も、
福田はそう言う政治的嗅覚だけは優れているんですよねえ(笑)。
と言うか、その嗅覚があればこそ、首相になれたのだと言えるでしょうが。

で、菅が辞職した後の民主党代表職ですが、
その直後は、この前の参院選で勝利をもたらした小沢に白羽の矢が当たり、
小沢自身も「人事刷新」を条件に、これを受け入れる姿勢を示すのですが、
小沢にもまた年期未納が発覚して、就任要請を辞退。
ただ小沢の場合、まだ年金の加入が任意であった頃の未納であり、
正直な所、そこまで問題は無かったのですが、
まあ、火中の栗は拾わずって事なのでしょうかねえ?
民主党に加わって、まだ半年程度という時期で、
まだまだ民主党内でも、小沢への警戒感も強かった頃ですし。
結局、菅の後任には、前回の代表選で敗れた岡田克也が就任する事となります。

この岡田は、小泉にとって、なかなかの難敵だったかも知れませんね。
菅の場合、小泉のパフォーマンス戦略にパフォーマンスで応戦して失敗してましたが、
岡田の場合、小泉と同じ土俵には乗らず、クソ真面目に応戦してましたからねえ。
堅苦しくてツマらないですが、その分、堅実であり崩し難い。
そうした事もあってか、岡田代表就任から2ヶ月後に行われた参議院選挙で、
わずか1議席とは言え、遂に民主党の獲得議席数が自民党を逆転!!
自公で合わせても、改選議席数の過半数に達する事が出来ず、
自らの人気を背景に戦ってきた小泉にとって、最大の敗北を喫する事となりました。
*****************************************************************************
* 2004年 参議院選挙(121議席)
*  与党  自民:49 公明:11
*  野党  民主:50 共産:4 社民:2 その他:5
*****************************************************************************
これだけの快勝である以上、参院選後に行われた代表選挙でも、
岡田の再選が無投票で決定します。
一方、敗北を喫した小泉も、これで黙って引き下がる訳がありません。
その為の仕掛けこそ、『郵政民営化』というドデカい花火でした!!

そもそも「郵政民営化」は、以前より小泉の持論でした。
貯金と簡保で、日本国民全体の金融資産のうち25%を有する郵便局は、
政府や官庁にとって、まさに国家の「第2の財布」であり、
もちろん、それだけ巨大な金額を扱うとなると、
自民党の主流派や大物議員などが、いろいろと利権を持っており、
また、郵便局員による組織票も、選挙には欠かせない大きな武器となっていました。
そこへ、非主流派の清和会所属であった小泉が、主流派からそれを奪う目的で、
「郵政の健全運営には民営化が必須!!」という理由の元、郵政の民営化に邁進。
そして自らが首相となった事で、現実にそれを敢行しようと動き出します。
当然、郵政利権を持つ政治家たちは、この民営化方針に大反対します。
すると小泉は、マスコミを通じて国民全体に、
彼らを「抵抗勢力」「守旧派」「改革の敵」として非難!!
郵政から失う組織票は、国民からの人気で十分に補えると考えた訳です。
ただし、郵政民営化に反対する議員の中には、利権とは関係なく、
国民の生活に深く根差した郵政ネットワークを壊す危険性すら孕む改革を、
単なる「政争の道具」として利用する小泉に、反発する議員も居たのですが、
小泉のパフォーマンスの前には、彼らの主張も打ち消されていきました・・・・

それにしても、相手派閥を追い落とすためとは言え、
巨大な利権と支持母体を、自民党から切り離してしまうんですからねえ。
ハッキリ言って、並大抵の政治家では不可能な選択ですよね。
福田赳夫の書生を経て国会議員になった経歴から、清和会所属ではありましたし、
派閥横断でYKKに属したりしましたが、基本的には「はぐれ狼」みたいな人で、
組織や人脈などという言葉とは縁遠からこそ、この決断が出来たのかも知れません。
そう言った意味では、組織や人脈や利権で歩む多くの政治家にとっては、
小泉のようなタイプは、まさに政界の常識に反する「変人」であり、
だからこそ亀井などの反対派も、小泉の対応を読み間違えたんでしょうね。
更に小泉は、小泉組の親分から大臣へ登り詰めた「小泉又次郎」の孫ですからねえ(笑)。
「入れ墨大臣」と呼ばれた祖父の勝負感を、孫の純一郎も受け継いでいるのかも知れません。

また本来であれば、こうした小泉の攻撃に対し、
最大派閥である橋本派「経世会」が立ちはだかって然るべきなのですが、
「参院のドン」と呼ばれた青木は、前回の総裁選時に小泉に籠絡されており、
真の実力者である野中は、こうした身内の裏切りに怒りと失望を覚えて既に引退、
名目上のトップである橋本も、闇献金問題などもあって引退を決意しており、
田中派時代より隆盛を極めた最大派閥も、完全に「寄せ集め」の集団になっていました・・・・
橋本派内からは、最長老格の綿貫民輔が反対派に回りますが、
反対派の主導したのは、前回の総裁選で反小泉票を集めた亀井派の亀井静香でした。
そして反対派の画策の結果、衆議院では法案が可決されたものの、参議院では否決。
反対派の面々は、これで「勝利」を確信したのですが、
小泉は「参議院で否決されて、衆議院を解散する」という驚天動地な対応で応戦。
政権誕生から4年半経ち、ジワジワと低下し続けていた小泉の支持率も、
『反対議員の追放&刺客候補の擁立』『これは郵政民営化の国民信託選挙』と煽ると、
これによって一気に10%以上跳ね上がり、マスコミも国民もこの選挙に熱狂します。
小泉プロデュースによる「郵政選挙」の開幕でした。

一方、自民党の公認から外された反対派議員たちは、
自民党への復帰を考え、無所属で出馬する議員も多かったですが、
反対を主導した亀井静香や綿貫民輔などは、新たに『国民新党』を結党。
また、当時長野県知事だった田中康夫の『新党日本』に参加する反対派議員も居ました。
こうした自民党のド派手な内部抗争に対して、
政権交代を狙い議席数を着々と増やして来た民主党は、真面目一直線の岡田代表の元、
「自民党の事には関与せず、民主党の政権公約を堅実に訴える」路線で行きますが、
そんな堅実路線は、台風級の小泉パフォーマンスにより、簡単に吹き飛ばされてしまいます。
*****************************************************************************
* 2005年 衆議院選挙(480議席)
*  与党  自民:296 公明:31
*  野党  民主:113 共産:9 社民:7 国民:4 日本:1 その他:19
*****************************************************************************
その結果、自民党は300議席に迫ろうかという大勝利で、
自公で合わせると、過半数どころか「3分の2」も越えてしまいます!!
「3分の2」という数字は、憲法の改正だって出来ますし(ただし参院も必要)、
「衆議院の優越」により、参院で否決されても衆院で再可決できる程の数ですからねえ。
更には、この選挙の結果によって、森派「清和会」は大きく議員数を増やし、
遂には橋本派「経世会」を抜き去り、名実共に「自民党最大派閥」へと、のし上がります。
その上、中曽根元首相や宮沢元首相を、「定年制」を持ち出して強引に引退させ、
まさに小泉にとっては、『歴史的大勝利』と呼べる圧勝でした。

この自民党大勝により、亀井にとって最良のシナリオであった
「自公がギリギリ過半数に達せず、国民新党へ助けを求める」という思惑は潰えます。
そして政権交代を訴えた民主党は、選挙前の現有議席を3分の1以上も減らし、
藤井裕久(代表代行)・石井一(副代表)・中野寛成(元幹事長)・鹿野道彦(元副代表)という
民主党内の大物議員さえ続々と落選する「大惨敗」を喫します。
堅物過ぎる岡田は、華やかな小泉に比べると、女性層からの人気が乏しかったのも原因の1つでした。
当然、この敗戦により、岡田は代表の座から降りる事となりますが、
この苦境時に、民主党内で岡田を支える人物は皆無でした・・・・
自民党・新生党・新進党と小沢に付き従い、新進党解党で裏切られた岡田は、
民主党の有力議員となっても、派閥やグループに所属する事を拒んでいた為、
組織による「しがらみ」はないものの、こうした時に助けてくれる「仲間」も居なかった訳です。
そう言う意味では、真面目で堅実という岡田のキャラを補うような仲間が居なかった事も、
この大敗を招いた1つの要因だったのかも知れません。

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