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[11901] 第15章:小泉の影を引きずる自民党返信 削除
2009/7/11 (土) 21:25:44 徳翁導誉

▼▲ 第15章:小泉の影を引きずる自民党 ▲▼

こうして、安倍自民と小沢民主の対決構造となった国会では、
古い自民党の象徴的人物でもある小沢に対抗する為、
安倍は『戦後レジームからの脱却』を掲げるなど、自らの若さを全面にアピール。
ですがそれは一方で、経験不足や実績不足と表裏一体でした・・・・
そうした思いの裏返しなのか、安倍内閣は次々と重要法案を提出し、
教育基本法の改正・防衛庁の省昇格・年金特例法などを成立させ、
残業代ゼロ化・公務員改革・共謀罪法・国民投票法などにも取り組みました。
ちなみにこの間、安倍とスタンスの近い民主党の前代表・前原が、
民主党内で、新代表の小沢と最も距離を取っていた事もあり、
「前原らが離党して連立参加か?」という噂も流れますが、結局噂止まりに終わります。

ただ、安倍も前原と同じ様に、未熟さ故の失敗を繰り返してしまいます。
郵政選挙圧勝で得た圧倒的な数を背景に、国会運営は数に頼った強引なモノとなり、
また、自分を応援してくれた仲間を多く取り立てた事から、「お友達内閣」と揶揄され、
そうした閣僚たちが次々に不祥事を起こしていくと、
それは野党やマスコミにとって、格好の攻撃材料となりました。
その最たるものが、松岡農水大臣と赤城農水大臣の更迭問題でした。
金銭問題を起こした大臣を、更迭の決断が出来ないままズルズルと続投させた事で、
松岡農水大臣を遂には自殺へと追い込んでしまいました・・・・
それでも安倍は、赤城農相の時も決断できずに、そのまま参議院選挙へと突入。
閣僚の不祥事続出や、郵政造反組の復党、消えた年金問題などにより、
就任当初は70%近かった安倍の支持率も、1年で30%台まで低下させており、
また、2年前の郵政選挙で、自民党が勝ち過ぎてしまった反動も予想された為、
選挙前から、自民党はかなりの苦戦が予想されていました。
その上、前回の参院選では、わずか1議席差とは言え民主党に負けており、
今度の参院選で定数の半数以上の議席を獲得できないようだと、
参議院は自公合わせても「過半数割れ」となる厳しい状況でしたので、
自民党側ですら、選挙の焦点は「如何に最小限の負けに食い止めるか」でした。
こうした状況から、『衆参同時選挙で起死回生を狙うべき』との声も起こりますが、
大臣すら更迭できない安倍に、衆院を解散をする決断力はありませんでしたし、
そもそも安倍自身は、「そんなに負けるはずがない」と高を括っていました。
*****************************************************************************
* 2007年 参議院選挙(121議席)
*  与党  自民:37 公明:9
*  野党  民主:60 共産:3 社民:2 国民:2 日本:1 その他:7
*****************************************************************************
しかし、結局終わってみれば自民党は、民主党に過半数近くを取られる大惨敗・・・・
過半数には自公合わせても全く足りず、参議院での過半数割れが決定的となります。
赤城農相は戦犯の1人として槍玉に挙げられ、参院選直後に更迭となりましたが、
「この時期に更迭するなら、なぜ選挙前にしないのか!?」と、不満が爆発しました。
一方、選挙前には、自公でギリギリ過半数に達しないケースを考慮して、
自民党との連立も模索していた国民新党の亀井でしたが、
ここまで自民党が大敗してしまうと、却って民主党の方が高く買ってくれると、
民主党・国民新党・社民党で連携し、参議院で過半数の議席を確保します。
こうして参議院では、菅から9年ぶりに小沢を首相に指名。
前原の代表辞任時には、「これでもう終わりか」と思われた民主党は、
わずか1年で、10年前の全盛期の勢いを取り戻す超V字回復を果たします。
そして、風頼みの選挙体質から少しは脱却できたという実感もあり、
党内で警戒され続けてきた小沢は、一躍「民主党に欠かせない人物」となりました。

一方、大惨敗を喫した自民党では、安倍がまさかの「首相続投宣言」をします。
与党が参院で過半数割れを起こした時、今までのケースでは辞任が当然でしたので、
この続投に対しては、海外からも「驚き」として報じられていました。
衆参がねじれた『ねじれ国会』では、国会運営は恐ろしいほど難しくなり、
その原因を作った与党のトップが、この状況で居座るのは普通あり得ませんからねえ。
ただ安倍の場合、郵政選挙で得た「衆院3分の2」という最後のカードがあり、
参院で否決されても衆院で再可決する最終手段が残されていました。
内閣を改造し、国会で所信表明まで行って、安倍内閣が再始動した直後、
まさかの続投宣言からわずか1ヶ月で、再びまさかの「首相辞任」を発表しました。
その上、辞任の理由を「小沢代表が会談に応じてくれないから」と発言し、
更には、ガンから病み上がりの与謝野官房長官に「健康問題の為」と擁護されると、
「みっともない」「だらしない」と非難の声に包まれての辞任となりました・・・・

こうして期待度も高く始まった若き安倍内閣は、わずか1年で終了し、
次の首相の座を巡り、再び総裁選が行われる事となりました。
無念の途中退場をした安倍の意中は、自分を支えてくれた麻生にありましたが、
阿倍の出身派閥である町村派内では、森や中川秀直などの重鎮たちが、
敗色濃厚だった参院選の前から、安倍から福田へ首相をすり替えようと考えており、
中川が「安倍は麻生に辞任へ追い込まれた」と麻生クーデター説を流布した事で、
安倍の意を汲み、「次は麻生で」という派内の論調は一気に姿を消します。
第2派閥の津島派では今度も額賀が出馬表明をしますが、再び派内がまとまらず表明撤回。
また、安倍内閣で重用されなかった古賀派・谷垣派・山崎派が、福田擁立に同調した事で、
「勝ち馬に乗れ」とばかりに、他の派閥も福田支持へと回った事で、
安倍の辞任直後、後継首相として有力視されていた麻生は、
急転直下、「麻生派vs.残り8派閥」という勝ち目のない戦いを強いられる事となります。
しかしそんな劣勢の中、鳩山邦夫や中川昭一などが派閥の枠を越えて麻生を応援し、、
その結果、予想通り総裁選で敗れはしたものの、4割近い得票を得る大健闘を見せます。
そして清和会は、森・小泉・安倍・福田と、4代続けて首相を輩出する事になりました。

福田内閣が誕生すると、政治的嗅覚に長けた福田は、
自民党4役のポストを、伊吹・二階・古賀・谷垣と各派閥の領袖に割り振り、
また、安倍が改造人事で任命したばかりの閣僚たちをほとんど再任させ、
参院過半数割れという苦境に立ち向かう為、とにかく党内のバランスに注意します。
野党やマスコミから、「派閥均衡人事で、古い自民党に戻った」と責められますが、
少なくとも自民党内部では、混乱を収拾する事に成功します。
ですが、こうして党内を安定させても、
参議院を民主党・国民新党・社民党に握られている現実は変わらず、
ここで出てきたのが、自民党と民主党による『大連立構想』でした。

自民党と民主党による大連立という構想案を持ち出し、推進した人物こそ、
国政へも深く関わる読売新聞のトップ、渡辺恒雄(通称ナベツネ)でした。
「大連立が成れば自民党政権は安泰だし、自らの悲願だった憲法改憲も可能になる」
数十年に渡り、自民党と強力なパイプを持つナベツネには、
この自民党の苦況時に、民主党のトップが小沢である事が、逆にチャンスに見えた訳です。
難しい国会運営を強いられている福田としては、まさに渡りに船な提案であり、
自民党内部からの切り崩しをずっと画策してきた小沢にも、大変おいしい話に見えました。
ですが、それはあくまでトップ同士の思惑であり、
政権を維持する為に何でもやって来た自民党の方は、それを同意できても、
「政権交代」を旗印に戦ってきた民主党にとっては、とても飲める案ではありませんでした。
小沢は「参院で提出した法案を実現できる」「政権運営の経験を積める」などと、
政権交代を目指す上でのステップとして、この大連立案への同意を求めますが、
菅や鳩山のみでなく、今まで小沢に付いてきた面々までもが、
「政権交代を願う国民の期待を裏切る」「大政翼賛会を思い起こさせる」と大反対!!
両党のトップ会談で決まった大連立は、わずか2時間で御破算となると、
小沢は代表辞任を発表し、「今のままでは民主党に政権担当能力はない」と言い放ちます。
まあ、「国民も、国会議員も、そのほとんどはバカだ」と考えているであろう小沢ですから、
思わず本音が出たんでしょうけど・・・こういう所が、今まで失敗を続けてきた理由なんですよね。
小沢代表の元、急激なV字回復をしてきた民主党でしたが、
この件を期に、「もう民主党は立ち直れないのでは?」とマスコミが騒ぎ立てます。
ですが皮肉な事に、小沢に率いられた事で、政権交代が現実味を帯びていた民主党内では、
一致団結して小沢の説得を行い、遂には小沢に辞意撤回をさせるに至ります。
ある意味では、民主党の成長ぶりを見せるゴタゴタとなりました。
今までの民主党なら、足の引っ張り合いはあっても、引き留めなんてありませんでしたから。

とは言え、こうした騒動があった以上、
「小沢一派が離党して自民党と組むのでは?」「いやいや、前原たちが離党して連立に」など、
噂は先行する事となりますが、実際には現実的な動きが見られる事もなく、
あの大連立騒動を経た事で、却って民主党の戦略方向性が共通認識として纏まり、
それは反対に、参院を民主党に奪われている自民党を苦しめる事になりました。
下がり続ける内閣支持率の中、自国開催の「洞爺湖サミット」も無事果たし、
任期満了まであと1年と迫り、いつ解散総選挙があってもおかしくない所に突入すると、
国民的人気のない事を自覚する福田は、「違う首相で選挙を戦った方が良い」と突然辞任。
参院が過半数割れしている為、国会運営も困難を極め、
更にはアメリカの住宅バブルが弾けた事で、今後の世界経済が不安視される中、
「1年やったし、もういいや」って所だったんでしょうね、福田としては。
福田の場合、「首相になったこれをやりたい」という思いどころか、
「どうしても首相になりたい」という思いすら乏しい政治家で、
まあ逆に言えば、だからこそ客観的に物事を見られ、首相にまで辿り着けたんでしょうけどね。
辞任会見の際、「私は自分を客観的に見られる。あなたとは違うんです」という発言をし、
「自分で言うなよ」と、当時は随分笑われたものですが、
本人が言っちゃうのはアレでも、客観的に見る事が出来ていたのは事実なんですよねえ。

まあ、そう言った事で、福田は首相を辞任した事で、
ここ2年間で3度目の総裁選が行われる事となるのですが、
去年の総裁選でも善戦し、当時流布されたクーデター説もデマである事が判明した為、
もうやる前から、麻生首相の誕生が予想された中での総裁選でした。
ちなみにその数ヶ月前、「派閥のトップは古賀・総裁候補は谷垣」という取り決めで、
加藤の乱によって分裂していた古賀派(離脱組)と谷垣派(残留組)が再統一しており、
これにより宏池会(新・古賀派)は、経世会(津島派)を追い抜き、
数の上では清和会(町村派)に匹敵する大派閥へと、のし上がっていましたが、
総裁選出馬に意欲を示す谷垣に対して、旧古賀派の面々が同意せず結局不出馬となり、
麻生内閣誕生後、古賀が選対委員長に留任された事で、再統一早々に亀裂が入り始めています。
でもまあ、小選挙区制が導入された事で、派閥よりも党が強くなり、
「派閥」という存在自体が、かなり液状化して来てますからねえ。
麻生の他に総裁選へ出馬した面々にしても、無派閥の与謝野は別として、
町村派の小池百合子も、山崎派の石原伸晃も、津島派の石破茂も、
派閥が纏まって、その派内の仲間を押すという事は無かったですし・・・・
とは言え考えてみれば、小池は保守党から入ってきた余所者で、
石原は山崎派の票目当てで派閥入りしたばかり、石破は出戻り組だという事を考えると、
派閥が纏まって押すなんて事は、ボスの後押しでもない限り、有り得ないのかな?

ちなみに自民党の思惑としては、総裁選挙を盛り上げて国民の関心を引き、
その上で人気者の麻生が首相となって、一気に解散総選挙へ打って出るとシナリオでしたが、
大量5人も出馬した総裁選は、結局自民党が期待した程には盛り上がらず、
総裁選勝利の結果発足した麻生内閣の支持率も、予想を下回るモノでした。
ただこの支持率は、麻生当人の人気をどうこう言う以前に、
これほどの短期間に、見え透いた自民党の演出を見せ続けられた結果とも言えました。
小泉劇場に乗せられた結果、自民党に300もの議席を与えてしまい、
時間の経過と共に、小泉改革による負の面も見え始めてきていた上に、
小泉より劣る役者と演出家が立ち回った所で、国民から呆れて見られるだけでしたので。
また、小泉以後の自民党が「総裁の人気」に頼るあまりに、
小沢によって、地上戦の選挙がうまくなって来ている民主党に反比例するかの如く、
自民党は逆に地上戦の能力や経験を落として来ていますね・・・・

結局、就任直後に解散へ踏み切れなかった麻生自民党は、
アメリカの住宅バブル崩壊に端を発する、
世界的な金融危機の勃発を理由に、解散時期をドンドン後ろへ下げていくのですが、
早期解散を決心していた麻生も、こうして決断すべき機会を逸すると、
ようやく手に入れた首相の座を出来るだけ長く維持したいと言う思いが強まって行き、
解散へと踏み切れないまま、ズルズルと解散を後回しにしていきます。
ですが、小派閥出身であり、また選挙対策として誕生した麻生内閣が、
政権を維持していく為には、いろいろな方面からの要求を聞き入れねばならず、
結果として、「ブレてばかりで、決断できない麻生」というイメージが定着します。
人気目当てで押し立てられた首相がこうでは、さすがに自民党内からも焦りの声が上がり、
こうして麻生降ろしの動きが見え始めるのですが、
丁度その時、タイミング良く西松建設の献金問題が発生し、
多くの自民党議員がスルーされる中、検察の白羽の矢が民主党代表の小沢に立ちます。
これにより、民主党も小沢も支持率を落としていき、
解散時期としてはこれ以上ない好機となりますが、
ここで解散しては、「国策捜査」の汚名を着る事が確実であり、この最後の機会まで逃します。
まあ麻生からすれば、「ここまで来たらサミットに出たい」という思いも強かったですし。
ただこれで、麻生降ろしの声は一時的に沈静化する事となります。
ですが、そうこうしている内に小沢が代表を辞任し、新代表に鳩山が選出されると、
民主党の支持率はジワジワと回復し、遂には大きな「政権交代風」となってしまいました。

こうして結局、任期満了まで2ヶ月となった現在、
念願だったサミット出席まで果たし、帰国後の麻生はどう言った決断をするのか?
都議選後に解散し、8月上旬投票か?
任期満了となってしまい、8月23日投票か?
会期末に解散し、8月下旬or9月上旬投票か?
それとも新総裁で、10月投票まで引き延ばすか?
まあどちらにしても、3ヶ月以内に衆議院選挙はやって来て、
国民の投票により、何らかの結果が出ます。
その結果が果たして如何なるモノとなるのか?
どういった結果となっても、日本政治の大きな転換点になる可能性は高いはずです。
そしてそれは、日本自体にとって、大きな転換点となるかも知れません。
自公が勝ってば、今度こそ民主党が分裂しないとも限りませんし、
民主党が割れなければ「ねじれ国会」が続いていく事を意味します。
また、民主党が勝って政権交代が起これば、それは日本の歴史に残る出来事となりますが、
ただし、あまりに民主党が圧勝しすぎてしまうと、
対抗馬となるべき自民党が瓦解して、2大政党制の実現が遠退いてしまう可能性があり、
逆に民主党のギリギリ勝利では、自民党をも巻き込んだ政権再編の引き金になりかねません。
って、どのケースとなるにしても、選挙後の最大のキー・プレイヤーは、
昨年の参院選に大勝した事で、参院に子分をいっぱい持っている小沢なんですよねえ(笑)。
そんな選挙の実施日が、もう目前にまで迫ってきています。
投票権を持つ人も、持たない人も、この転換点をしっかり見つめておきましょう。
長く生きていても、なかなか訪れないような機会ですから。
以上、このクソ長い「ひとり語り」、もしくは「小沢・小泉物語(笑)」を終わります。
この続きを書くような時が来たとして、その時は一体どうなって居るんでしょうかね?

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