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[21305] Re:七国大戦(団体戦) 参戦者求む返信 削除
2017/9/13 (水) 23:24:14 呂翁

あるところに一人の若者が、鬱屈した思いを抱えていた。
若者いわく、
ただ生きているだけの毎日はつまらない。
生まれたからには、古の英雄英傑のように
己の能力でもって活躍をしてみたいと思うのに
その活躍の場がないのだという。

それを聞いていた翁が言った。
おぬしにうってつけの場所があるぞ、と

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連れていかれた若者は、ほどなくして師と出会った。
師はさまざまなことを教え
そして信頼し、いろいろなことを任せてくれた。
失敗をすれば、優しく間違いを諭し
成功をすれば、共に我が事のように喜んだ。

あるとき、若者は師から志を打ち明けられた。
国を建て賢者を集め、天下を取り、良き国を作り上げたいのだと

若者答えは決まっていた。
師以外の誰にそれが適いましょうか
そして言った。
己も微力ながら尽くさせてほしい、と

それからは目まぐるしい日々が待っていた。
次々と策を建て、夢へと邁進する師
何とか遅れまじと奮闘する若者
次第に人材も集まり、勢力は天下へと勢いを増していく
若者はただ圧倒され、何とか足手まといにならぬよう足掻くばかりであった。

そして、ついに師は天下人となった。
祝宴の末席で己の無力を恥じる若者。
そこに師は歩み寄り言った。
今まで良く尽くしてくれた、と
若者はあふれる涙を抑えられなくなった。

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どれくらい経っただろうか、若者ははっと目覚めた 。
遊戯であると忘れるほど、夢中になっていたらしい。

翁は笑って、どうであったか尋ねる。
若者は答える
活躍も何も、己の未熟さを痛感させられるばかりであった、と

ならばもう一度参加してくるがよい、と
翁は再び若者を戦いの場に連れて行った。

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今度の若者はあらゆる人に師事した。
人心掌握に長けるもの、戦略に長けるもの、交渉に長けるもの、調略に長けるもの、謀略に長けるもの
敵味方の区別なく交わり多くの友を得た。
その甲斐あってか、若者も見違えるように成長し
以前では到底出来なかったであろう難事も次々と成功させていく
だがしかし、若者の向上心は留まることを知らなかった。

そして迎えた天下分け目の決戦。
国主が急遽指揮をとれなくなり、迎えた最大の危機。
人々に頼りとされたのは、誰あろう若者であった。

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若者は上機嫌であった。
短い期間の代行であったが、若者は不利な状況をただ耐えるだけでなく
反撃の糸口を見出し、復帰した国主に引き継いだ。
若者が功績第一位であることは、誰の目にも明らかであった。

次はもっと活躍をして見せると意気込み
若者は再び戦いの場へと身を投じていった。

翁はただ笑って見守るだけであった。

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戦場に辿り着いた男は、すぐさま国を興した。
仲間を集め、軍を揃え、積極的な外交で有利を得ると
果敢に打って出て、瞬く間に二国を落として遺臣を吸収した。

ほかの地域でも、強国が弱国を倒し
天下は三つの強国が割拠することとなった。

だが男は負ける気がしなかった。
身についた自信と、自分の考えを正確に実行する優秀な臣の存在が男の気を大きくさせた。

評定では二国のうちどちらがより脅威であるか、喧々諤々の議論が行われていた。
どちらも筋道の立った、良案であったため両論相譲らず白熱していく
だがどの意見も、流石に統一までを見せた策ではなかった。

男は静かに議論に耳を傾け、やがて閃いた。

一方を同盟国とし、残る一方と敵対する
そこまでは今までに出ていた意見と変わり映えはない。

だが、両国軍の配置を巧みに利用した用兵で
目立つことなく、同盟国よりも自国が大きく有利を得る策であり
よしんば思惑を悟られ、二国を同時に相手することになったとしても
地形を利用して二国の連携を乱すことで、互角以上の戦いも可能な
統一までを描いた鮮やかな策であった。

国論は決まり、策は実行に移される。
男の想定通り、いや寵臣の機転もあり想定以上に
男の勢力は快進撃を続けていく。

だがここで、異論を唱える臣が出てきた。
彼は現状の同盟国の実力を高く警戒しており
先の議論では現状とは逆の外交案を献じていたが、最終的には男の出した策を支持していた。

だが、警戒すべき同盟国側が何時まで経っても破約して敵に回らないことを怪しいと考え
再び評定、内密とも活発に意見を述べるようになっていた。

男は最初こそ反応を示していたが、じきに臣の意見を無視するようになった。
男は腹を立てていた。
こんなにも順調に事が運んでいるのに何故水を差すのか、と
同盟国が破約しないのも、男の戦略の秘匿がうまくいっている以外に何があるのか、と

男の心に驕りが生まれつつあった

ある日事件が起こり、同盟国が対策を打たなかった本当の訳が明らかになった。
吸収した滅ぼした国の遺臣の一部が揃って同盟国に寝返ったのである。
男は慌てて、無視していた臣の密書を再読する
そこには、遺臣達の心にわだかまりが残っていること
そして、同盟国が遺臣達に接触をしてきている可能性を示し
こんにちの事態を予言するものであった。

男は急ぎ臣に謝罪し、対応策を求めた。

しかし、男の行動は遅すぎた。
翌日、臣は敵対国へと寝返っていった。
男に愛想が尽きたのである。
また、悪いことは続くもので
彼を追って敵対国へと向かう将も現れた。
彼は、思ったように活躍が出来ず思い悩んでいた将を気にかけ
常日頃から励ましていたのである。

日の出の勢いであった男の勢力は、見る影もない弱小勢力へと落ちていった。

戦いのさなか、今までは大いに活躍していた寵臣がらしくない失敗をしてしまう。
挽回が不可能なものではなかったが、追い詰められた心地の男は必要以上の叱責をしてしまった。

男はとうとう孤城に追い詰められ、最期の時を向けようとしていた。
傍らに味方の姿はなく、城を囲む軍勢も激しくしのぎを削った両二大国の軍勢ですらない
反乱軍のものであった。

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我に返った男は青ざめた。
なんてことをしてしまったのか、と
そしてこれが、遊戯であって良かったと痛感した。

なるほど奥が深い
まだまだ己は未熟者である。
男は今回の反省を胸に、再び戦場へと向かう
男の顔は、かつて抱えていた退屈さを微塵も感じさせないのになっていた。

翁は、もうどこにも現れてはいなかった。

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