| ▼▲ 第7章:自民党復活と野党の混迷 ▲▼
1996年、55年体制が崩壊してから初めての衆議院選挙が行われます。
自民党を下野させて、8党派連立で生まれた細川政権、
連立内部のゴタゴタから、少数与党であった羽田政権、
国民が驚天動地した、自社さ連立の社会党・村山政権、
そして、政権の座へと再び返り咲いた自民党の橋本政権。
めまぐるしく政局が動いたこの3年間、国民は傍観者を強いられましたが、
ここでようやく、国民の主張を国会へ届ける機会が訪れた訳です。
主要政党は、連立与党である「自民党」「社民党」「さきがけ」、
これに対する野党は「新進党」と「共産党」、
そして、誕生したばかり『民主党』がありました。
まずはこの年の始め、凋落する一方の社会党は、
自らのイメージを刷新する為にも、党名を「社会民主党(社民党)」へ改称します。
しかし、そんな事で国民の支持が戻ってくる訳もありません・・・・
こうした凋落傾向は、同じく連立を組む新党さきがけも同じでした。
自民党と社会党の連立を橋渡しし、あわよくば自ら首相にという武村の密かな野望も、
連立パートナーである自民党にエネルギーを吸い取られ、
自民党が政権与党として立ち直ると共に、両党とも用済み扱いになっていました。
復活した自民党と、それに挑む新進党による、保守と保守の2大政党制。
「リベラル」を標榜する両党にとって、この体制はまさに自らの存亡の危機でした。
そうした危機感の中で動き出したのが、さきがけ所属の鳩山由紀夫でした。
山花たちとの新党構想が潰えると、続いて新進党の船田と新党結成を画策。
最終的には、当時は新進党に所属していた弟の鳩山邦夫、
「社会党のプリンス」と呼ばれながら、北海道知事に転身して政界激変の外にいた横路孝弘、
そして、薬害エイズ問題の対応で当時人気を博していた、さきがけ所属の厚生大臣・菅直人。
この4名が中心となり、社民党・さきがけ・新進党の離党組と共に、
「市民リーグ」「民革連」が加わり、第1期とも言うべき『旧・民主党』が誕生します。
ちなみに、この時の結党費用25億円は、鳩山兄弟の個人資産から15億円、
民革連の母体であり、社会党最大の支援団体である労働組合「連合」から10億円の借金
という内訳だったらしいです。
この新党へは、その母胎ともなった新党さきがけの議員を始め、
人気下落に歯止めが利かない社民党議員からも、参加の希望が殺到します。
しかし、自民党から新進党へと歩んできた鳩山邦夫は、
旧態色と左翼色が強まる事を警戒し、両党の大物議員の参加を頑なに拒否。
『排除の論理』と呼ばれたこの行動で、村山や武村は新党参加から弾き出され、
新党へ参加しなかった議員と共に、社民党とさきがけは小政党として残ります。
こうして新党へは、さきがけから前原、枝野、野田などの現・民主党の実力者が、
社民党からは、山花の新党構想に乗りかけた旧右派系の議員が加わりました。
ちなみに、保守系の新党結成に拘って鳩山との新党構想を断念した船田は、
新進党にも居られなくなり、無所属を経て自民党に出戻ると、
同時期に新進党から自民党へ移った元NHK女子アナの畑恵議員と不倫の末、結婚。
自民党離党以前には「竹下派のプリンス」と呼ばれ、
新生党や新進党では「小沢の秘蔵っ子」と呼ばれた名門家出身の有望議員は、
「政界失楽園」と騒がれたこの略奪婚により、落選の憂き目に合います。
今では国政に復帰していますが、こうした経歴から大きな役職には就けていません。
こうして『自民党・新進党・民主党』の三つ巴で行われた1996年の衆議院選挙。
新進党がおよそ半世紀ぶりに、自民党以外で議員定数の過半数以上の候補を擁立し、
更には、選挙制度改革の結果生まれた「小選挙区比例代表制」での初選挙でもあり、
この三つ巴の衆議院選挙は、国民の大きな関心を集めていました。
しかし蓋を開けてみれば、1年前の参院選での大躍進が嘘のように、
新進党は自民党を上回る所か、微減とは言え解散前の160議席すら下回る結果に。
党内部は、小沢の強引な政党運営により空中分解寸前の状態であり、
小沢に付いてきた保守層は、宗教政党である公明党を取り込んだ事が嫌われ、
小沢の能力に期待した有権者も、大型減税などの飴玉ばかりの政策提示に呆れ、
無党派層の目は、誕生したばかりの民主党へと奪われた結果でした。
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* 1996年 衆議院選挙(500議席)
* 与党 自民:239 社民:15 さきがけ:2
* 野党 新進:156 民主:52 共産:26 民改連:1 その他:9
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他方で民主党は、いきなり50議席を越える好調発進で、
自民党の方も、過半数近くまで議席数を戻して来る一方、
社民党とさきがけは完全に凋落し、連立政権でも閣外協力へと転落。
また、政界全体巻き込んだ政権争いのゴタゴタに嫌気がさした層を、
常に野党で居続けた共産党が吸収し、小規模ながら躍進する事となります。
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