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[11900] 第14章:小沢民主と小泉後継レース返信 削除
2009/7/11 (土) 21:25:08 徳翁導誉

▼▲ 第14章:小沢民主と小泉後継レース ▲▼

郵政選挙での大敗北から6日後、民主党では岡田の後任を決める代表選が行われます。
立候補したのは、またまた出馬の「菅直人」と、
これを機会に党の若返りを図る「前原誠司」でした。
小沢は前原に対して応援の打診しますが、前原はこれを拒否。
そして結果は、『前原96票 菅94票 無効2票』という僅少差で、
優勢が伝えられていた菅を破り、42歳の前原が民主党の新代表に就任します。
「鳩菅の綱引きから、一気の若返りで民主党の体質さえ変わるのでは!?」
若くてルックスも良い前原に、国民は期待し、自民党は民主党への警戒心を強めます。
そうした党外からの目に応えるかのように、前原は党の要職をガラリと若手に替え、
与党との関係も、「対決路線」から「対案路線」への転換を図り、
更には、小泉が支持母体である郵政組織と決別して、国民から称賛を受けたのを見て、
民主党最大の支持母体である労働組合との関係見直しまでブチ上げます。
その上、「対米追従路線の批判」と「中国の軍事力増強への脅威論」を展開し、
党の内外から、右派からも、左派からも、非難を浴びる事となりますが、
逆に、こうした民主党代表の新しい姿勢を、評価する声も一方ではありました。

ですが、こうした前原の新路線は、
与党政権と対決すべき「最大野党」として、スタンスが凄く解り難く、
経験の乏しい若手主導の党運営、そして国会運営は、誠にお粗末なモノでした・・・・
それを最も端的に表してしまったのが、『永田メール問題』ですね。
ライブドア事件・防衛庁の官製談合・耐震偽装問題・牛肉輸入問題と、
いわゆる「4点セット」によって、自民党が窮地に追い込まれる中、
堀江からの電子メールを根拠に、永田議員がライブドアと自民党の関係を糾弾しますが、
それが偽造メールである事が判明し、永田を後押ししていた前原も窮地に追い込まれると、
代表の責任を肩代わりする形で、民主党の国会対策委員長である野田佳彦が辞任。
こうして混乱させてしまった国会をどうにかする為、野田の後任を探すものの、
強引なまでに若手切り替えを行い、それで躓いた前原に対して、
国会対策に精通した菅直人などのベテラン議員は、後任依頼を次々に断り、
最終的には、ほとんど隠居状態だった党内最長老の渡部恒三に、すがり付きます。
渡部が後任に就くと、そこはさすが元・竹下派七奉行の1人。
こんな人物に出てこられては、自民党の議員も頭が上がらず、
更には、マスコミ行脚をして「民主党の黄門様」などと祭り上げられ、
地にまで落ちた民主党の信頼も、何とかギリギリ甦生の方向へと向かいます。
しかし、代表である前原への信頼までは、それで回復する事はありませんでした。
結果、前原はわずか半年あまりで代表を辞任。
そのキッカケを作った永田も議員を辞職し、その後、自殺してしまいます・・・・

仲間が居らず失敗した岡田、仲間だけに頼り失敗した前原。
ここで遂に、民主党の代表として小沢一郎が登場してきます。
前原の後任を決める代表選では、菅が今度も挑戦するのですが、
2票差だった前回とは違い、今回は47票差という大差での敗戦。
この大敗が響いたのか、その後、菅は東京都知事への転身を検討し始めます。
まあ、郵政選挙で大惨敗し、永田メールで自爆した民主党は、
もう本当に、危篤寸前という状態でしたからねえ・・・・
1993年の55年体制の崩壊後、10年以上に渡る政界再編を経て、
自民党政権に対抗すべく最後に残った「民主党」が、ここで崩壊してしまえば、
日本の政治は当分の間、自公連立政権で運営され続ける事となる可能性が高い。
そう見る人も多かった為、菅の転身模索も、ある程度は現実味を帯びた話でした。

ですが、最後の最後にすがった小沢により、民主党はまさかの甦生を開始します!!
それは自自公連立政権からの離脱以来、久方ぶりの小沢の本格復帰でもありました。
民主党の初代事務局長であり、現在は政治評論家である伊藤惇夫が言うように、
自民党の強固な派閥に対し、民主党のグループは「文化系サークル」みたいなもので、
しがらみが少なくて自由度も高い分、凄味や纏まりに欠けて勝負感も精神力も弱い。
そんな文化系サークルの集団である、サークル連合みたいな民主党の中に、
「体育会系運動部」みたいな自民党の派閥から、
そうした体育会系の気風を最も濃厚に持つ小沢一派がやって来たと。
言うなれば、文化系サークル連合に、応援団か野球部が入ってきたようなモノです(笑)。
そりゃあ、これだけ毛色の違うのが入ってくれば、周りはみんな警戒しますけど、
状況が状況だけに、警戒なんてしている場合じゃ無くなってしまった訳ですね。
しかし、『狼に率いられた羊の群は、羊に率いられた狼の群より強い』という諺の如く、
小沢に率いられた民主党は、一気にその姿を変化させます。

その時の風頼みで、票固めという事をほとんどして来なかった民主党の議員に対し、
「足」を使って選挙区を歩き回り支持を広める、泥臭い地上戦での戦い方を徹底。
それまでの民主党議員は、街頭演説などの空中戦による選挙活動が多かったですからねえ。
更には小沢自らが、小泉により切り捨てられた団体組織を回る事で、
自民党の支持母体であった組織票(「コネ」)を切り崩していき、
苦しい地方や業界に対しては、手厚い支援政策(「カネ」)を約束する。
良いか悪いかは別として、新聞記者にしても、営業マンにしても、政治家にしても、
必要なモノは、「足」と「コネ」と「カネ」を駆使して得るものですからねえ。
また、民主党の党内運営に関しては、
岡田・前原と2代続けて若い代表が失敗した事で、若手議員も比較的に大人しく、
菅と鳩山による綱引きも、小沢が入って三極鼎立による「トロイカ体制」となって安定し、
リベラル系議員からの反発対策も、既に左派大物の横路とは入党時に連携済みであり、
小泉政策に対抗する為にも、左派色のある政策を提示している事で彼らを抑えていると、
小沢代表の元、民主党は過去最高の安定感を見せるようになっていました。

こうして小沢新体制が始動した民主党に対し、
自民党では、小泉後継レースが始まっていました。
郵政選挙の前から小泉は、「あと1年で辞める」と公言しており、
麻生太郎・谷垣禎一・福田康夫・安倍晋三といった総裁候補を競わせていました。
この4人は、まとめて『麻垣康三』とも呼ばれました。
ここでちょっと、当時の自民党の派閥を見てみましょう。
最大派閥となった小泉属する清和会は、森派から「町村派」に代わり、
総裁候補としては安倍と福田の2人を擁していた上、
また、その別働隊として「小泉チルドレン」を抱えていました。
一方、「津島派」と名を変えた元・最大派閥の旧橋本派は、
所属議員数では未だに、町村派に次ぐほど大規模な派閥でしたが、
有力議員の多くが、小泉政権時に政治的失脚か郵政造反へと追いやられ、
トップを継いだのが、出戻り組で、しかも元宮沢派の津島だという事実からも、
この経世会に、往時の力が既に無い事が分かると思います・・・・
その他には、郵政造反で派閥の長である亀井自らが抜けた師水会「伊吹派」、
小泉政権では、最初は良いように利用され、最後には捨てられた「山崎派」、
加藤の乱の際、切り崩し工作によって分かれて出来た「古賀派」が中規模派閥。
あとは、加藤の乱後も加藤に付いていき、そして派閥を継いだ「谷垣派」、
河野グループを継いだ「麻生派」、旧河本派の「高村派」、
旧保守新党系の「二階派」が小規模派閥と言った感じでした。
各派のおおよその議員数を記すと、町村派が70人、無派閥の小泉チルドレンが50人、
津島派が60人、中規模派閥が40人前後、小規模派閥が15人前後といった所です。
派閥が9つも乱立し、その中で清和会が図抜けて強大な力を持つという、
まさに「小泉の天下」といった状態だった訳ですね(笑)。

でもまあ、小泉後継レースと言っても、麻生も谷垣も派閥の長とは言え小派閥で、
強大な力を持つ小泉の意中が、同じ派閥の安倍となれば、
ある意味で、やる前から結果は見えていたんですけどね。
首相になりたくて、なりたくて、でもなれずに死んだ親分・安倍晋太郎を、
間近でずっと見続けてきた小泉は、息子の晋三を首相にさせたかったんでしょうね。
一方、安倍は安倍で、本人も父の事を間近で見てきただけに、
首相になりたいという願望はかなり強かったものの、
「大臣経験すらない自分には、首相はまだ早過ぎる」と躊躇してました。
それを小泉が、「1度機会を逃せば、次はもう来ないかも知れない」と背中を押し、
こうした一連の動きを客観的な立ち位置から見ていた福田は、総裁選不出馬を表明。
まあ元々、福田は郵政選挙前から小泉と距離を置き、
亀井が郵政造反で党内から姿を消すと、反小泉派の期待を集めるんですよね。
残る3人は、郵政選挙後に重要ポストに据えられ、表向きには親小泉の立場でしたから。
ですが、衆院選圧勝後の後継レースで、未だ小泉の人気と影響力が大きい以上、
「ここで安倍と争っても損をするのは自分」という、政治的嗅覚が働いたんでしょうね。
福田康夫という政治家は、なかなかそう言う部分が優れてますので。
それに安倍は、拉致問題での対応から国民的な人気も高かった為、
人気で戦う小泉のやり方に慣らされた自民党議員が、人気のある安倍へと集まり、
結局、総裁選の結果は2位の麻生を3倍以上離す圧倒的な得票数で安倍が勝利。
戦後最年少の52歳、しかも戦後生まれ初の首相として、安倍内閣が発足します。
ちなみにこの小泉後継レース、清和会に最大派閥の地位を奪われた経世会からも、
「小渕派のプリンス」として竹下から可愛がられた額賀福志郎が出馬を目指すのですが、
久間や青木などが派内から足を引っ張り、額賀自身の覚悟もブレて断念。
鉄の結束を誇った経世会のなれの果てを、衆目に晒す結果になります。


[11901] 第15章:小泉の影を引きずる自民党返信 削除
2009/7/11 (土) 21:25:44 徳翁導誉

▼▲ 第15章:小泉の影を引きずる自民党 ▲▼

こうして、安倍自民と小沢民主の対決構造となった国会では、
古い自民党の象徴的人物でもある小沢に対抗する為、
安倍は『戦後レジームからの脱却』を掲げるなど、自らの若さを全面にアピール。
ですがそれは一方で、経験不足や実績不足と表裏一体でした・・・・
そうした思いの裏返しなのか、安倍内閣は次々と重要法案を提出し、
教育基本法の改正・防衛庁の省昇格・年金特例法などを成立させ、
残業代ゼロ化・公務員改革・共謀罪法・国民投票法などにも取り組みました。
ちなみにこの間、安倍とスタンスの近い民主党の前代表・前原が、
民主党内で、新代表の小沢と最も距離を取っていた事もあり、
「前原らが離党して連立参加か?」という噂も流れますが、結局噂止まりに終わります。

ただ、安倍も前原と同じ様に、未熟さ故の失敗を繰り返してしまいます。
郵政選挙圧勝で得た圧倒的な数を背景に、国会運営は数に頼った強引なモノとなり、
また、自分を応援してくれた仲間を多く取り立てた事から、「お友達内閣」と揶揄され、
そうした閣僚たちが次々に不祥事を起こしていくと、
それは野党やマスコミにとって、格好の攻撃材料となりました。
その最たるものが、松岡農水大臣と赤城農水大臣の更迭問題でした。
金銭問題を起こした大臣を、更迭の決断が出来ないままズルズルと続投させた事で、
松岡農水大臣を遂には自殺へと追い込んでしまいました・・・・
それでも安倍は、赤城農相の時も決断できずに、そのまま参議院選挙へと突入。
閣僚の不祥事続出や、郵政造反組の復党、消えた年金問題などにより、
就任当初は70%近かった安倍の支持率も、1年で30%台まで低下させており、
また、2年前の郵政選挙で、自民党が勝ち過ぎてしまった反動も予想された為、
選挙前から、自民党はかなりの苦戦が予想されていました。
その上、前回の参院選では、わずか1議席差とは言え民主党に負けており、
今度の参院選で定数の半数以上の議席を獲得できないようだと、
参議院は自公合わせても「過半数割れ」となる厳しい状況でしたので、
自民党側ですら、選挙の焦点は「如何に最小限の負けに食い止めるか」でした。
こうした状況から、『衆参同時選挙で起死回生を狙うべき』との声も起こりますが、
大臣すら更迭できない安倍に、衆院を解散をする決断力はありませんでしたし、
そもそも安倍自身は、「そんなに負けるはずがない」と高を括っていました。
*****************************************************************************
* 2007年 参議院選挙(121議席)
*  与党  自民:37 公明:9
*  野党  民主:60 共産:3 社民:2 国民:2 日本:1 その他:7
*****************************************************************************
しかし、結局終わってみれば自民党は、民主党に過半数近くを取られる大惨敗・・・・
過半数には自公合わせても全く足りず、参議院での過半数割れが決定的となります。
赤城農相は戦犯の1人として槍玉に挙げられ、参院選直後に更迭となりましたが、
「この時期に更迭するなら、なぜ選挙前にしないのか!?」と、不満が爆発しました。
一方、選挙前には、自公でギリギリ過半数に達しないケースを考慮して、
自民党との連立も模索していた国民新党の亀井でしたが、
ここまで自民党が大敗してしまうと、却って民主党の方が高く買ってくれると、
民主党・国民新党・社民党で連携し、参議院で過半数の議席を確保します。
こうして参議院では、菅から9年ぶりに小沢を首相に指名。
前原の代表辞任時には、「これでもう終わりか」と思われた民主党は、
わずか1年で、10年前の全盛期の勢いを取り戻す超V字回復を果たします。
そして、風頼みの選挙体質から少しは脱却できたという実感もあり、
党内で警戒され続けてきた小沢は、一躍「民主党に欠かせない人物」となりました。

一方、大惨敗を喫した自民党では、安倍がまさかの「首相続投宣言」をします。
与党が参院で過半数割れを起こした時、今までのケースでは辞任が当然でしたので、
この続投に対しては、海外からも「驚き」として報じられていました。
衆参がねじれた『ねじれ国会』では、国会運営は恐ろしいほど難しくなり、
その原因を作った与党のトップが、この状況で居座るのは普通あり得ませんからねえ。
ただ安倍の場合、郵政選挙で得た「衆院3分の2」という最後のカードがあり、
参院で否決されても衆院で再可決する最終手段が残されていました。
内閣を改造し、国会で所信表明まで行って、安倍内閣が再始動した直後、
まさかの続投宣言からわずか1ヶ月で、再びまさかの「首相辞任」を発表しました。
その上、辞任の理由を「小沢代表が会談に応じてくれないから」と発言し、
更には、ガンから病み上がりの与謝野官房長官に「健康問題の為」と擁護されると、
「みっともない」「だらしない」と非難の声に包まれての辞任となりました・・・・

こうして期待度も高く始まった若き安倍内閣は、わずか1年で終了し、
次の首相の座を巡り、再び総裁選が行われる事となりました。
無念の途中退場をした安倍の意中は、自分を支えてくれた麻生にありましたが、
阿倍の出身派閥である町村派内では、森や中川秀直などの重鎮たちが、
敗色濃厚だった参院選の前から、安倍から福田へ首相をすり替えようと考えており、
中川が「安倍は麻生に辞任へ追い込まれた」と麻生クーデター説を流布した事で、
安倍の意を汲み、「次は麻生で」という派内の論調は一気に姿を消します。
第2派閥の津島派では今度も額賀が出馬表明をしますが、再び派内がまとまらず表明撤回。
また、安倍内閣で重用されなかった古賀派・谷垣派・山崎派が、福田擁立に同調した事で、
「勝ち馬に乗れ」とばかりに、他の派閥も福田支持へと回った事で、
安倍の辞任直後、後継首相として有力視されていた麻生は、
急転直下、「麻生派vs.残り8派閥」という勝ち目のない戦いを強いられる事となります。
しかしそんな劣勢の中、鳩山邦夫や中川昭一などが派閥の枠を越えて麻生を応援し、、
その結果、予想通り総裁選で敗れはしたものの、4割近い得票を得る大健闘を見せます。
そして清和会は、森・小泉・安倍・福田と、4代続けて首相を輩出する事になりました。

福田内閣が誕生すると、政治的嗅覚に長けた福田は、
自民党4役のポストを、伊吹・二階・古賀・谷垣と各派閥の領袖に割り振り、
また、安倍が改造人事で任命したばかりの閣僚たちをほとんど再任させ、
参院過半数割れという苦境に立ち向かう為、とにかく党内のバランスに注意します。
野党やマスコミから、「派閥均衡人事で、古い自民党に戻った」と責められますが、
少なくとも自民党内部では、混乱を収拾する事に成功します。
ですが、こうして党内を安定させても、
参議院を民主党・国民新党・社民党に握られている現実は変わらず、
ここで出てきたのが、自民党と民主党による『大連立構想』でした。

自民党と民主党による大連立という構想案を持ち出し、推進した人物こそ、
国政へも深く関わる読売新聞のトップ、渡辺恒雄(通称ナベツネ)でした。
「大連立が成れば自民党政権は安泰だし、自らの悲願だった憲法改憲も可能になる」
数十年に渡り、自民党と強力なパイプを持つナベツネには、
この自民党の苦況時に、民主党のトップが小沢である事が、逆にチャンスに見えた訳です。
難しい国会運営を強いられている福田としては、まさに渡りに船な提案であり、
自民党内部からの切り崩しをずっと画策してきた小沢にも、大変おいしい話に見えました。
ですが、それはあくまでトップ同士の思惑であり、
政権を維持する為に何でもやって来た自民党の方は、それを同意できても、
「政権交代」を旗印に戦ってきた民主党にとっては、とても飲める案ではありませんでした。
小沢は「参院で提出した法案を実現できる」「政権運営の経験を積める」などと、
政権交代を目指す上でのステップとして、この大連立案への同意を求めますが、
菅や鳩山のみでなく、今まで小沢に付いてきた面々までもが、
「政権交代を願う国民の期待を裏切る」「大政翼賛会を思い起こさせる」と大反対!!
両党のトップ会談で決まった大連立は、わずか2時間で御破算となると、
小沢は代表辞任を発表し、「今のままでは民主党に政権担当能力はない」と言い放ちます。
まあ、「国民も、国会議員も、そのほとんどはバカだ」と考えているであろう小沢ですから、
思わず本音が出たんでしょうけど・・・こういう所が、今まで失敗を続けてきた理由なんですよね。
小沢代表の元、急激なV字回復をしてきた民主党でしたが、
この件を期に、「もう民主党は立ち直れないのでは?」とマスコミが騒ぎ立てます。
ですが皮肉な事に、小沢に率いられた事で、政権交代が現実味を帯びていた民主党内では、
一致団結して小沢の説得を行い、遂には小沢に辞意撤回をさせるに至ります。
ある意味では、民主党の成長ぶりを見せるゴタゴタとなりました。
今までの民主党なら、足の引っ張り合いはあっても、引き留めなんてありませんでしたから。

とは言え、こうした騒動があった以上、
「小沢一派が離党して自民党と組むのでは?」「いやいや、前原たちが離党して連立に」など、
噂は先行する事となりますが、実際には現実的な動きが見られる事もなく、
あの大連立騒動を経た事で、却って民主党の戦略方向性が共通認識として纏まり、
それは反対に、参院を民主党に奪われている自民党を苦しめる事になりました。
下がり続ける内閣支持率の中、自国開催の「洞爺湖サミット」も無事果たし、
任期満了まであと1年と迫り、いつ解散総選挙があってもおかしくない所に突入すると、
国民的人気のない事を自覚する福田は、「違う首相で選挙を戦った方が良い」と突然辞任。
参院が過半数割れしている為、国会運営も困難を極め、
更にはアメリカの住宅バブルが弾けた事で、今後の世界経済が不安視される中、
「1年やったし、もういいや」って所だったんでしょうね、福田としては。
福田の場合、「首相になったこれをやりたい」という思いどころか、
「どうしても首相になりたい」という思いすら乏しい政治家で、
まあ逆に言えば、だからこそ客観的に物事を見られ、首相にまで辿り着けたんでしょうけどね。
辞任会見の際、「私は自分を客観的に見られる。あなたとは違うんです」という発言をし、
「自分で言うなよ」と、当時は随分笑われたものですが、
本人が言っちゃうのはアレでも、客観的に見る事が出来ていたのは事実なんですよねえ。

まあ、そう言った事で、福田は首相を辞任した事で、
ここ2年間で3度目の総裁選が行われる事となるのですが、
去年の総裁選でも善戦し、当時流布されたクーデター説もデマである事が判明した為、
もうやる前から、麻生首相の誕生が予想された中での総裁選でした。
ちなみにその数ヶ月前、「派閥のトップは古賀・総裁候補は谷垣」という取り決めで、
加藤の乱によって分裂していた古賀派(離脱組)と谷垣派(残留組)が再統一しており、
これにより宏池会(新・古賀派)は、経世会(津島派)を追い抜き、
数の上では清和会(町村派)に匹敵する大派閥へと、のし上がっていましたが、
総裁選出馬に意欲を示す谷垣に対して、旧古賀派の面々が同意せず結局不出馬となり、
麻生内閣誕生後、古賀が選対委員長に留任された事で、再統一早々に亀裂が入り始めています。
でもまあ、小選挙区制が導入された事で、派閥よりも党が強くなり、
「派閥」という存在自体が、かなり液状化して来てますからねえ。
麻生の他に総裁選へ出馬した面々にしても、無派閥の与謝野は別として、
町村派の小池百合子も、山崎派の石原伸晃も、津島派の石破茂も、
派閥が纏まって、その派内の仲間を押すという事は無かったですし・・・・
とは言え考えてみれば、小池は保守党から入ってきた余所者で、
石原は山崎派の票目当てで派閥入りしたばかり、石破は出戻り組だという事を考えると、
派閥が纏まって押すなんて事は、ボスの後押しでもない限り、有り得ないのかな?

ちなみに自民党の思惑としては、総裁選挙を盛り上げて国民の関心を引き、
その上で人気者の麻生が首相となって、一気に解散総選挙へ打って出るとシナリオでしたが、
大量5人も出馬した総裁選は、結局自民党が期待した程には盛り上がらず、
総裁選勝利の結果発足した麻生内閣の支持率も、予想を下回るモノでした。
ただこの支持率は、麻生当人の人気をどうこう言う以前に、
これほどの短期間に、見え透いた自民党の演出を見せ続けられた結果とも言えました。
小泉劇場に乗せられた結果、自民党に300もの議席を与えてしまい、
時間の経過と共に、小泉改革による負の面も見え始めてきていた上に、
小泉より劣る役者と演出家が立ち回った所で、国民から呆れて見られるだけでしたので。
また、小泉以後の自民党が「総裁の人気」に頼るあまりに、
小沢によって、地上戦の選挙がうまくなって来ている民主党に反比例するかの如く、
自民党は逆に地上戦の能力や経験を落として来ていますね・・・・

結局、就任直後に解散へ踏み切れなかった麻生自民党は、
アメリカの住宅バブル崩壊に端を発する、
世界的な金融危機の勃発を理由に、解散時期をドンドン後ろへ下げていくのですが、
早期解散を決心していた麻生も、こうして決断すべき機会を逸すると、
ようやく手に入れた首相の座を出来るだけ長く維持したいと言う思いが強まって行き、
解散へと踏み切れないまま、ズルズルと解散を後回しにしていきます。
ですが、小派閥出身であり、また選挙対策として誕生した麻生内閣が、
政権を維持していく為には、いろいろな方面からの要求を聞き入れねばならず、
結果として、「ブレてばかりで、決断できない麻生」というイメージが定着します。
人気目当てで押し立てられた首相がこうでは、さすがに自民党内からも焦りの声が上がり、
こうして麻生降ろしの動きが見え始めるのですが、
丁度その時、タイミング良く西松建設の献金問題が発生し、
多くの自民党議員がスルーされる中、検察の白羽の矢が民主党代表の小沢に立ちます。
これにより、民主党も小沢も支持率を落としていき、
解散時期としてはこれ以上ない好機となりますが、
ここで解散しては、「国策捜査」の汚名を着る事が確実であり、この最後の機会まで逃します。
まあ麻生からすれば、「ここまで来たらサミットに出たい」という思いも強かったですし。
ただこれで、麻生降ろしの声は一時的に沈静化する事となります。
ですが、そうこうしている内に小沢が代表を辞任し、新代表に鳩山が選出されると、
民主党の支持率はジワジワと回復し、遂には大きな「政権交代風」となってしまいました。

こうして結局、任期満了まで2ヶ月となった現在、
念願だったサミット出席まで果たし、帰国後の麻生はどう言った決断をするのか?
都議選後に解散し、8月上旬投票か?
任期満了となってしまい、8月23日投票か?
会期末に解散し、8月下旬or9月上旬投票か?
それとも新総裁で、10月投票まで引き延ばすか?
まあどちらにしても、3ヶ月以内に衆議院選挙はやって来て、
国民の投票により、何らかの結果が出ます。
その結果が果たして如何なるモノとなるのか?
どういった結果となっても、日本政治の大きな転換点になる可能性は高いはずです。
そしてそれは、日本自体にとって、大きな転換点となるかも知れません。
自公が勝ってば、今度こそ民主党が分裂しないとも限りませんし、
民主党が割れなければ「ねじれ国会」が続いていく事を意味します。
また、民主党が勝って政権交代が起これば、それは日本の歴史に残る出来事となりますが、
ただし、あまりに民主党が圧勝しすぎてしまうと、
対抗馬となるべき自民党が瓦解して、2大政党制の実現が遠退いてしまう可能性があり、
逆に民主党のギリギリ勝利では、自民党をも巻き込んだ政権再編の引き金になりかねません。
って、どのケースとなるにしても、選挙後の最大のキー・プレイヤーは、
昨年の参院選に大勝した事で、参院に子分をいっぱい持っている小沢なんですよねえ(笑)。
そんな選挙の実施日が、もう目前にまで迫ってきています。
投票権を持つ人も、持たない人も、この転換点をしっかり見つめておきましょう。
長く生きていても、なかなか訪れないような機会ですから。
以上、このクソ長い「ひとり語り」、もしくは「小沢・小泉物語(笑)」を終わります。
この続きを書くような時が来たとして、その時は一体どうなって居るんでしょうかね?


[11902] ちょこっと、あとがき返信 削除
2009/7/11 (土) 21:26:23 徳翁導誉

◆◆◆あとがき◆◆◆

いや〜、書いた、書きまくった。
って、個人的な選挙気分が高まって、勢いで書いてみたは良いですけど、
これほどの長文、果たして最後まで読む人が居るのやら?
まあ、書きたいから書いたというだけなので、どちらでも良いんですけどね(笑)。
ちなみに、衆院選予想大会の方では、マニア向けにこんなの↓まで作っちゃいました。
http://f15.aaa.livedoor.jp/~tokuou/senkyo2009/shuuinsen.cgi
もちろん、通常版の方は都議選同様のライト仕様ですけどね。
先週末はこの長文とマニア予想で、ほとんどの時間を費やしてしまいましたよ(笑)。

ちなみに、必要以上の人物評や、政局に絡まない政策・事件などは、
『政局史』の流れを分かり易くする為、敢えてその記載を避けました。
政治家の人物評に関しては、「歴代首相の採点」とかを別の企画でやれば面白いかも?
最後に、これを全て読んで下さった方が居るのであれば、ありがとうございました(笑)。
また、記憶を頼りに書いた部分もあり、間違っている箇所があるかも知れませんが、
そうした部分に関しては、御指摘して下されば有り難いです。

ついでなんで、Flash作品同様、参考文献の方も記しておきますね。
与党である自民党の動きは、ニュース等で結構記憶に残っているので、
基本的には、野党関連についての書籍が多いです。
「政党崩壊」(新潮新書)
「戦後政治史」(岩波新書)
「自民党政治の終わり」(ちくま新書)
「戦後史のなかの日本社会党」(中公新書)
「民主党」(新潮新書)
「日本共産党」(新潮新書)


[11908] 感想返信 削除
2009/7/13 (月) 21:03:01 ラインフォード

色々見て勉強になりました。
正直、日本の政治史みたいなのはアンマ詳しくなかったので
とっても助かります。


しかし、最近の日本の政治には
やっぱり、理念的なものがないなぁと思いました。
1つ1つの時点における、さまざまな思惑はとっても面白かったんですが
それが、自分の生きている時代のことだとおもうと
ちょっと背筋が寒くなる・・・・

とりあえず、今度の選挙を楽しみにしておきます。


[11909] Re:感想返信 削除
2009/7/13 (月) 23:39:24 ショボ・クレルヒト

いやぁ…凄いです。自分にとっても勉強になりましたね。
それと衆院予想Flashも、かなりマニアックな仕様なのがいいですw

ただ、衆院予想Flash見てて思ったのですが、なんなんでしょうね、幸福なんたら党って。
「いきなりの登場」で、かつほぼすべての選挙区に立候補者出してるみたいですけれども、
こういうの、不気味に見えます。

▼ ラインフォードさん
> しかし、最近の日本の政治には
> やっぱり、理念的なものがないなぁと思いました。
> 1つ1つの時点における、さまざまな思惑はとっても面白かったんですが
> それが、自分の生きている時代のことだとおもうと
> ちょっと背筋が寒くなる・・・・
>

理念を持ったとしても、それを実現しようにも足を引っ張るものがありますし。
具体的にそれは何だと言われても、自分には答えようが無いですが…orz
ただ、何でしょう、ほんの小さなミス一つで死ぬまで追い込まれてしまったりしますからね。
言葉一つの言い間違いだけで何日もその件でねちねち追求され、証人喚問だ何だと…
そうして時間が過ぎていき、絶対多数の国民が実現を望む法案の審議がなおざりにされ、
会期終了直前になって、官僚がまとめてくれた法案をばたばたと可決・否決と…
ちょっと線路から外れましたが、まともな人間ならこんな所に近づきたくないでしょうね(´・ω・`)


[11914] 幸福実現党の話とか返信 削除
2009/7/14 (火) 19:25:57 徳翁導誉

> > しかし、最近の日本の政治には
> > やっぱり、理念的なものがないなぁと思いました。

まあ、全く無いという事はないんですけどね。
あとがきで、こう↓書きましたように、
「ちなみに、必要以上の人物評や、政局に絡まない政策・事件などは、
 『政局史』の流れを分かり易くする為、敢えてその記載を避けました。」
理念だ、政策だ、という話は、今回はあまり書きませんでしたので。

例えば、絶対的与党であった自民党を割って出た小沢や武村などには、
政局的な思惑だけでなく、やはりそれだけの「理念」を持ち合わせていましたし、
自民党の中でも、中曽根・橋本・小渕といった歴代首相は、
何だかんだで、政治家個人としての理念は持っていましたよ。
その中で1番はとなると、やはり小沢なんですかねえ?
構想力も立案力も実行力もピカイチで、角栄も金丸も「後継者」と目したのですが、
如何せん、人を率いる能力が決定的に欠けていたと・・・・
苦手は苦手で仕方ないものの、しかし、それを改善しようともしない傲慢さが、
能力的には小沢を評価できても、個人的には好きになれない理由なんですよねえ。


> いやぁ…凄いです。自分にとっても勉強になりましたね。
> それと衆院予想Flashも、かなりマニアックな仕様なのがいいですw

一応言っておくと、「Flash」ではなく「CGI」ですけね。
Flashだと動画の事になっちゃいますから。
それにしても、まだここにリンクを貼っただけで、
正式公開前から10名以上の予想が付くとは、正直言って想定外でした(笑)。
ライト版の方に関しては、既にプログラムは出来ていますけど、
都議選予想からもまだ時間が経ってないので、週末辺りに入れ替えですかねえ?

> ただ、衆院予想Flash見てて思ったのですが、なんなんでしょうね、幸福なんたら党って。
> 「いきなりの登場」で、かつほぼすべての選挙区に立候補者出してるみたいですけれども、
> こういうの、不気味に見えます。

ああ、幸福実現党ですか(笑)。
あれは「幸福の科学」という宗教団体が、1ヶ月半前に作った政党です。
1990年代初頭の「新興宗教ブーム」では、オウム真理教と共に代表的な新興宗教の1つで、
今まではずっと、自民党を支える後援団体の1つだったんですよ。
最近の例ですと、千葉県知事選で隠れ自民党の森田健作をサポートしてました。
ただ昨今の状況では、自民党の政権維持がかなり厳しくなっており、
宗教政党である公明党との連立にも不満を持っていた為、
居ても立っても居られず、ここへ来て自ら政党を立ち上げてしまったと・・・・
ただ、蛇蝎の如く嫌う民主党に政権を取らせまいと立ち上がったものの、
こうして自民党の固定票を割る事で、結果的に民主党をアシストする格好になってます(笑)。

ちなみに掲げる政策の方は、宗教政党なので穏健かと思いきや、結構過激(笑)。
党首である教祖の妻は、「ナイチンゲールの生まれ変わり」を自称してるんですが、
北朝鮮の核問題には特にご熱心で、「日本の核武装&北朝鮮への直接攻撃」を唱えてます。
面白い政策としては、「移民で人口3億人」や「贈与税と相続税の廃止」などがありますね。
あとは現行憲法の廃止と、自らが作った新憲法の施行なども言っています。
衆院選に向けて候補者の方も、「ほぼすべて」ではなく、「本当に全て」に擁立しており、
例えば麻生首相の選挙区には、「金田一少年の事件簿」を描いた漫画家を立て、
「マンガ対決」とか言って煽ったりしてますね。
もっと凄いのだと、与謝野財務大臣と同じ選挙区から出馬予定の幹事長(党内No.2)が、
幸福実現党の立党大会で、「与謝野は選挙半年後に死ぬ予定」とか言ってます。
4分45秒あたりから→ http://www.youtube.com/watch?v=w0jwqWa39ug

って、こんな風に書くと、「不気味に見える」という感情を煽っちゃいますかねえ?
まあでも実際問題、民主党候補と競っている自民党候補でもなければ、
ほとんど気にしなくても良いような存在ですよ。
これだけ候補を立てると、それだけでも10億円は国に払いますので、
「選挙を盛り上げてくれる上に、国庫に10億円も収めてくれる」と気楽に見てましょう(笑)。
以前は自民党の支持母体でしたし、オウムと同じ顛末を歩くようにも思えませんから。

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