|
▽ 2012/11/29 (木) 20:10:49 ▽ 徳翁導誉 |
| > > え〜と、世間的にはあまり注目されてなかったかも知れませんが、
> > 2019年のラグビーW杯の開催と、2020年の東京オリンピック招致に向けて、
> > 老朽化した国立競技場の再建案コンクールが開催されていたのですが、
> > 先日、「新・国立競技場」のデザインが決定したので、一応紹介しておきます。
> > http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_1.jpg
> > http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_2.jpg
> > http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_3.jpg
> > http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_4.jpg
> >
> > う〜ん、まあデザインの方は、個々人で嗜好は様々なので別に良いのですが、
> デザインは外国の方のデザインなようですか・・・
> デザインも国際競争をしないといけないのですか?
> 国立競技場なのだから日本人のデザインでいいでしょう。
まあ、建築家というのは世界規模で活動する人たちですし、
素晴らしい施設が出来るのであれば、それこそ誰が設計しても良いとは思いますけどね。
例えば、晩年はテレビや選挙に出て、世間一般では「面白いおじさん」扱いだった黒川紀章なども、
ロシアでは2018年のW杯会場となるサンクトペテルブルクの新スタジアム(結果的にはこれが遺作に)を、
マレーシアでは首都の国際空港を、オランダでは自国の画家ゴッホの美術館を、
カザフスタンに至っては、新首都アスタナの都市計画を任されたりしてましたからねえ。
依頼側は建築家の国籍などには捉われず、建築家も国籍に関係無く世界で活躍しているのですから、
逆に言えば日本だって、何も国籍に拘る必要はないと思いますよ。
もちろん、それは日本人の建築家であってOKなのですが、そこに拘るあまり、
巨費を投じて行う国家プロジェクトで、できた施設のレベルがダウンしては勿体ないですし。
とは言え、今回の新国立競技場のコンペは、『「いちばん」をつくろう。』を合言葉に、
日本の力を世界にアピールすべく、日本の象徴となるスタジアムを作ろう!!との事だったのですが、
そもそも応募条件が、「国際的な建築賞の受賞者 or 収容1.5万人以上のスタジアムの設計経験者」なので、
この条件に該当する日本人建築家は、もともと数える程しか居なかったという話らしいですけどね。
オープン参加と言いつつ、著名な建築家しか応募できないので、若手からは相当反発があったそうですし。
(権威主義的で、若手には挑戦する機会すら与えられない所は、まさに現状の「日本の象徴」と皮肉る声も)
まあ、それでも日本人では、「せんだいメディアテーク」を手掛けた伊東豊雄や、
http://www.jpnsport.com/img/finalist_08_main_1.jpg
「金沢21世紀美術館」を手掛けた妹島和世(SANAA)など、日本を代表する建築家も最終候補者に名を連ねてました。
http://www.jpnsport.com/img/finalist_09_main_1.jpg
(もしも近くに行く機会があれば、仙台と金沢の2ヶ所は個人的にも寄ってみたい場所です・笑)
ただその一方で、選ぶ方のトップも、存命中の建築家では日本で最も著名な安藤忠雄だったので、
「ライバルである日本人は選ばれないんじゃないか?」との意見は、一部で出てたりはしてました・・・・
(そうした部分が本当に、今回の審査結果を左右したかどうかは分かりませんけどね)
あと他には、フランスの設計事務所から抜け道的に応募してきた田根剛という若手が居ました(笑)。
高校時代はジェフ市原のユース・チーム(当時だと阿部勇樹や佐藤寿人が居ました)に在籍し、
怪我でサッカーの道を諦めると、今度は建築家の道を志してヨーロッパに渡り、
6年前には26歳の若さでエストニア国立博物館の設計を任される事に・・・なんて略歴を書くと、
彼の作品が選ばれていたら、新しい日本の象徴として、もっと話題性があったかも知れませんね。
(まあ実際は、若手へのガス抜き目的で最終候補に残されただけかも知れませんが)
ちなみに、最終候補11作品に残った彼のデザイン↓がこれ。
http://www.jpnsport.com/img/finalist_06_main_1.jpg
ネット上では「古墳スタジアム」とか呼ばれてましたが(笑)、ちょっと独創的過ぎたかも?
とは言え、西には明治神宮、東には赤坂御所、北には新宿御苑という感じに、
周りを緑に囲まれ、一応は神社施設である神宮外苑(神宮の杜)の立地を考えると、
こうした「杜(もり)」の感じを漂わせるスタジアムは、意外と周囲に合っていたかも?
逆に、今回選ばれたイラク出身でイギリスで活躍する女性建築家のデザインの方は、
http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_1.jpg
こちらはネット上で「宇宙船スタジアム」とか呼ばれ、こんなコラまで作られてました(笑)。
http://livedoor.3.blogimg.jp/hatima/imgs/5/e/5edce17c.jpg
ただ立地的に言うと、スタジアムの奥側は新宿の高層ビル群なので、上図の様な感じで、
近未来的な宇宙船デザインの競技場も、一見合いそうな感じはしますが、
一方で手前側に目を向けると、東京名所の「いちょう並木」で知られる神宮外苑の奥に鎮座する
http://komekami.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/pc010772.jpg
重厚な石造りの「聖徳記念絵画館」のすぐ左隣に(下の写真だと左側に国立の照明塔が写ってます)
http://www.ichimen.net/g-13.jpg
あの宇宙船スタジアムがドカンと不時着してる訳ですね(笑)。
http://image.itmedia.co.jp/nl/articles/1210/31/l_wk_121031nnsj04.jpg
まあ個人的には、そんなカオスっぷりも決して嫌いでは無いですけども、
「神宮の杜は荘厳な方が望ましい」と考える人たちにとっては、ちょっと刺激が強いデザインかも?
とは言え、そうした要素を除いて考えれば、この人の案は最有力候補の一角でしたので、
このデザイン案が採用された事自体は、あまり以外な結果でもありませんでした。
(ただ、既に名声は十分にある人物とは言え、逆に言えば既にピークが過ぎてる印象も・・・・)
> > 総工費に1300億円(解体費は別枠)も掛けるビッグ・プロジェクトでありながら、
> どこから予算が出るのやら・・・・
> 財政難なときにやるべきことか・・・
あの国立競技場ができたのが1958年なので、既に半世紀を超え、そろそろ還暦なんですよ。
作りとしても古いですし、コンクリート的にも寿命が迫って来るので、
まあ、今すぐの必要は無いにしても、建て替え時期を迎えているのは確かなんですよね。
建物にだって寿命ってモノはありますし、古過ぎると補修よりも新築の方が安く上がりますから。
(実際、国立に行くと、ボロさを感じるのは確かですしねえ)
ちなみに財源の方は、まあ「国立」なので基本的には国税なのですが、
(そういえば以前、復興財源で国立の改修工事をした為、問題となってましたね)
一部をtotoから拠出するって話にはなってますね。
国立競技場の運営をしてるのも、totoの運営をしてるのも、
同じ「日本スポーツ振興センター」という文科省の外郭団体なので、その辺は勝手気ままです(笑)。
また、totoの更なる収益アップを図るべく、最高賞金を6億円から10億円まで引き上げようとか、
Jリーグ以外にも代表戦やW杯まで対象を広げようとか、
いっそ競技の垣根を越えて、プロ野球や大相撲まで対象にしちゃおう・・・なんて話が、
ここ最近になって、文部科学省と超党派議員団から出てきたりしてますね。
> > 現状のサブ・グランド問題などを解決する気が全く無いのが、本当に残念ですね・・・・
> > 一応、現段階では東京五輪の招致に成功した場合は、
> 初耳ですね。
> 無知で申し訳ない。
> > 神宮外苑内の軟式野球場と第二球場に仮設のサブ・グランドを置くみたいですが、
> > 仮設という事は、大会後には撤去する訳で、五輪開催の後に残るのは、
> > 国際基準の満たさない為に、まともな陸上大会すら開けない収容8万人の巨大な陸上競技場です・・・・
> 今の国際基準の満たすために新・国立競技場が建設されるとか聞いていました…
> 国際基準を満たせないのなら建設する価値ゼロです。
ちょっと土地勘がないと分かりにくい話かも知れませんので、まず最初に航空写真を貼っておきます。
http://building-pc.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2012/11/16/tokyojingu12111_2.jpg
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/baby_theory/20121115/20121115204301.png
で、簡単に言ってしまえば、大会の本番直前に練習する場所(サブ・グランド)が、
現在の国立競技場では、国際大会を開ける基準を満たしていないんです。
まあ国内では、隣接する東京体育館の付属陸上競技場(トラック1周が半分の200メートル)や、
代々木公園陸上競技場(直線で2キロ以上離れており、徒歩移動で30分以上かかる遠さ)を、
強引にサブ・グランドとする特例を認めていますが、世界大会ではそれじゃ通りませんからねえ。
陸上トラックのレーン数を増やすとか、コーナーの角度を変えるなどの変更は、
競技場の建て替え時に同時進行する事で、国際基準に対応する改修作業が行えるでしょうけども、
サブ・グランドの件ばかりは、土地の面積が確保できないと話にならない問題ですからねえ・・・・
本格的な陸上競技場を目指すなら、サブ・グランドとは別に投擲種目の練習場も欲しい所ですし。
まあ、ぶっちゃけ、現状の国立競技場というのは、交通の便は良いにしても、
陸上大会を行おうとする場合、当日に選手たちが練習するには不便な競技場なので、
近年では、小さな大会だと川崎の「等々力競技場」を、
http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&ll=35.586619,139.65065&z=17
大きな大会だと横浜の「日産スタジアム」を使う事が多いみたいです。
http://maps.google.co.jp/maps?hl=ja&ll=35.510431,139.605203&z=16
これを言っては元も子もないですが、日産スタジアムは十分に五輪を開催できる施設を持ってますので、
これが横浜五輪の招致であったり、この施設が東京都内にあれば、こんな事にはなって無いんですけどね。
とは言え、東京五輪を招致する以上は、そんな事を言っていても仕方ないですし、
国立のアクセス面の素晴らしさを考えれば、それこそ問題さえ解決できれば、良いスタジアムになるんです。
という事で、国立の南側に隣接する明治公園や日本青年館(若者の為の民間施設です)を取り壊し、
更には都営アパート(250世帯ほどの住民は全て退居)を取り壊す事で、何とか土地を確保する事にしました。
ハッキリ言って、これだけでも「かなり無理してるなぁ」って感じなのですが、
いざ土地の確保が決まると、急に今度は「ここはエントランス広場にしよう」とか言い出して、
どうやらサブ・グランドは軟式野球場に、投擲練習場は神宮第二球場に仮設するみたいです・・・・
(以前にも東京五輪や世界陸上で国立を使用した際、そこに仮設を作った前例があるらしいです)
こうなると、ただ単純に、都営アパートの住民を追い出したかっただけなのかも知れませんね?
新築する国立競技場は、音楽コンサートも開催できる施設にしたいらしいですが、
近くにアパートなどあっては、騒音問題が生じるであろう事が十分に予想されますし。
ちなみに、イベント会場としても雨でも利用できるよう、屋根が閉まる事も今回の設計条件でした。
http://www.jpnsport.com/img/finalist_04_main_4.jpg
しかし、前回も書きましたけども、サブ・グランドが無ければ陸上大会なんて開けない訳で、
東京五輪は仮設で乗り切れても、仮設を撤去すれば、それこそ無用の長物ですよねえ・・・・
無理に国立を使わなくても、近郊には陸上に適した等々力競技場や日産スタジアムがある訳ですし。
これがまだ、この「ウェンブリー方式」案が採用されていれば、分からなくも無かったんですけどね。
http://www.jpnsport.com/img/finalist_01_main_1.jpg
http://www.jpnsport.com/img/finalist_01_main_2.jpg
http://www.jpnsport.com/img/finalist_01_main_3.jpg
簡単に説明しますと、客席は階が高くなるほどグランドから遠ざかる事を利用して、
基本は2番目の「客席4階建ての球技専用スタジアム」とし、
球技ピッチよりグランドを広く使う陸上競技では、客席1階部分にトラックなどを仮設し、
3番目の「客席3階建ての陸上競技場」として使う訳ですね(詳細説明はないので図から見た私の想像ですが)。
要するに、五輪が終われば仮設トラックを取り払い、陸上競技場から球技場に変更するって事ですね。
これであれば、サブ・グランドが五輪開催時だけの仮設だって構いませんし、
東京のど真ん中にこれだけの球技専用スタジアムが出来れば、サッカー代表戦もここが本拠地でしょうね。
まあ、落選が決まった案ならばとか、今更どうこう言っても仕方ないですけども・・・・
で、話を元に戻しますと、周辺地域の再整備も含めた大規模な改修工事を行うのであれば、
やはり、このサブ・グランド問題は解決して欲しかったんですよ。
キチンとした陸上競技場になれば、東京のど真ん中で国際的な陸上大会も開けますので。
陸上界は近年、1年の半年を掛けて世界14都市を転戦する「ダイヤモンド・リーグ」が始まり、
F1やテニスのように、陸上競技もまた、世界ツアーで戦う時代に入って来たんですよ。
そして現在、このダイヤモンド・リーグが開催されているアジアの都市は、
中国の上海と、カタールのドーハの2都市という事で、日本はその中に入っていないんです!!
やはりそれでは、正直言って寂しいんですよねえ・・・・
なので、日本でもダイヤモンド・リーグを開催するには、
新・国立競技場があれば1番かな?とか考えていたのですが、結果はこんな事態に。
日産スタジアムでもやる気があれば出来ますけども、やはりアクセス面では国立が1番ですしね。
> > (仮にサブ・グランドを存続させても、今度は球場が足りないという別の問題が発生しますし)
> 球場は新設するしかないですな。
サブ・グランドを新設する土地が無いって事は、球場を新設する土地も無いんです。
分かりやすいよう、再び国立周辺の航空写真を貼りますけども、
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/b/baby_theory/20121115/20121115204301.png
国立競技場の左隣にある聖徳記念絵画館の上側に、大きな広場がありますよね。
そこが、球場が6面もある神宮の軟式野球場(サブ・グランドの仮設予定地)です。
立地の良さと、球場の多さから、使用頻度が日本一高い草野球場とも言われ、
野球好きの間では「草野球の聖地」として認知されている場所でもあります。
そして、投擲種目の練習場となる予定の神宮第二球場の方も、
こちらも神宮球場(第一球場)と合わせて、「アマチュア野球の聖地」と呼ばれ、
大学野球に高校野球、そしてプロ野球と、日本一使用頻度高い硬式野球場であります。
その為、日程が詰まり過ぎているので、雨天延期や引き分け再試合などがあると、
第一球場だけだと試合数を消化できず、やはり2球場セットでの使用が必要となってきます。
また、第二球場は試合が無いと、ゴルフの打ちっ放し練習場へと姿を変えるので、
都心部でゴルフ練習場が少ないという事情から、これもなかなか無くせないのが実情です。
それを国立で陸上大会を開ける為にと潰して、普段使用されないサブ・グランドを常設するのは、
ハッキリ言って、まず間違いなく、現状の多くの利用者の理解を得られないと思います。
そしてまた、これらの土地および施設は、全て明治神宮の持ちモノなので、
東京都所有だった都営アパートの撤去みたいに強引に行って、簡単には行かないんですよ。
|
|
|