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[21535] イタリア総選挙返信 削除
2018/3/15 (木) 19:28:42 玉川大納言

イタリア総選挙が3月4日ありましたね。案の定というべきでしょうか、ポピュリズム政党「五つ星運動」が最多議席を取りましたね。
中道右派連合所属で、やはりポピュリズムの「同盟」も第三党ですし、言ってしまえば、イタリアにポピュリズム旋風が吹き荒れた感じでしょう。

中道左派の民主党は第二党ながら、同盟との差はわずか、連立協議にも参加しない方針で、下野ほぼ確実かと思われます。

議席数を見てみると、なんと同盟と五つ星運動の二党の合計だけで、上下院ともに過半数を超えました。
ポピュリズム勢力が本当に過半数を超えるとは、正直驚きでした。

中道右派「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相は、五つ星運動との連携に消極的のようですが、
議席の上では同盟の方が多いですし、同盟書記長のサルヴィーニ氏は、五つ星運動との連立には前向き、
もしかしたら、ポピュリズム二党だけで、連立政権を作るかもしれませんね…。


[21538] Re:イタリア総選挙返信 削除
2018/3/16 (金) 19:39:42 徳翁導誉

> イタリア総選挙が3月4日ありましたね。
> 案の定というべきでしょうか、ポピュリズム政党「五つ星運動」が最多議席を取りましたね。
> 中道右派連合所属で、やはりポピュリズムの「同盟」も第三党ですし、
> 言ってしまえば、イタリアにポピュリズム旋風が吹き荒れた感じでしょう。

まずは簡単に状況を整理しますと、下院議会の定数が630議席で、過半数は316議席。
五つ星運動が227議席で単独では第一党となり、
中道右派連合が265議席(同盟126議席・フォルツァ・イタリア101議席)で、
中道左派連合が122議席(民主党113議席)、その他が16議席という具合らしいですね。

> 中道左派の民主党は第二党ながら、同盟との差はわずか、
> 連立協議にも参加しない方針で、下野ほぼ確実かと思われます。

いや、確かに選挙結果の理屈から言えば、
政権与党が284議席から113議席に減らしてる時点で、大惨敗には間違いないのですが、
こと連立交渉による政局のターンとなれば、話は別でして、
議席数を大きく減らしたとは言え、未だ2割弱を占める第二党であり、
敢えて自ら連立交渉の外に身を置く事で、却って他党の連立構想に主役になれるんですよね。

実際に日本でも、1993年の衆院選で55年体制が崩壊した際、
1議席増やした自民党に対して、社会党は136議席を70議席にまで減らす大惨敗を喫しました。
しかし、それでも第二党の地位は何とか確保して、無視するには大き過ぎる存在として残った事で、
8党派連立による非自民政権が誕生した後、社会党が離脱すると一気に少数与党に転落しちゃいましたし、
自民党が政権を奪還する為に、社会党の委員長を首相に据えるという事態まで発生しました。
つまり社会党は、大惨敗により2大政党の地位を失ったお陰で、首相まで出せた事になります!!

そして話をイタリアに戻しますと、
五つ星運動も、中道右派連合も、政権獲得を狙ってはいるものの、
お互いに単独で過半数にまるで足りず、どこかと連立を組む事は必須条件となります。
しかも、路線の違いによって、五つ星運動と中道右派連合が組む事は困難な一方で、
中道左派連合は、五つ星運動とも、中道右派連合とも組める立ち位置にあります。
五つ星運動とは同じ左翼系で調整がしやすく、右派連合とは旧勢力同士で人間関係が出来てますので。
そうなると、大惨敗を喫した与党が、そのまま政権にしがみ付くよりも、
ここは一旦引き、五つ星運動か中道右派連合のどちらかが打診してくるのを待ち、
自分たちの要求を呑ませる方が賢い方法ですし、両方から打診が来れば更に条件を吊り上げられます。

また仮に、双方から連立の打診が来なくても、その時は大人しく敵失を待てば良い状況で、
五つ星運動が政権を握ろうが、中道右派連合が政権を握ろうが、どのみち上手く行くはずがなく、
そうなれば次の選挙では、政権批判票の受け皿として機能し、政権復帰の可能性も高まると。

> 議席数を見てみると、なんと同盟と五つ星運動の二党の合計だけで、上下院ともに過半数を超えました。
> ポピュリズム勢力が本当に過半数を超えるとは、正直驚きでした。

五つ星運動の躍進自体はまだしも、中道右派連合の中でも、
同盟の議席が、フォルツァ・イタリアのそれを上回ったのは、確かに驚きでしたね!!

> 中道右派「フォルツァ・イタリア」のベルルスコーニ元首相は、五つ星運動との連携に消極的のようですが、
> 議席の上では同盟の方が多いですし、同盟書記長のサルヴィーニ氏は、五つ星運動との連立には前向き、
> もしかしたら、ポピュリズム二党だけで、連立政権を作るかもしれませんね…。

上でも少し書きましたけども、五つ星運動は恐らく、中道右派連合とは組めません。
まず初めに、五つ星運動における最大の理念は「マフィア政治との決別」であり、
「マフィア政治の権化」であるベルルスコーニなど、まさに倒すべき最大の敵なのですから、
そんな相手と組んでしまうなど、それは五つ星運動にとっては自殺行為に等しい選択となります。
また、ベルルスコーニの側からしても、自らを敵視する相手と組む事など困難でしょうし、
それで政権が握れるならまだしも、その場合は右派連合から追い出される可能性が高い以上、
連携に消極的と言いますか、本心では同盟と五つ星運動の連携を阻止する方向にしか動かないと思います。
そしてベルルスコーニが組むとなれば、その相手は同じく2大政党であった左派連合しかなく、
この旧勢力同士が組む事で、勢いづく同盟を押さえ込みたい所でしょうから、
左右大連立となれば、第二党である民主党の首相の座を譲る可能性も十分にあるように思えます。

だからこそ逆に言うと、同盟側はこうして、五つ星運動に秋波を送るような真似をしている訳ですね。
選挙前までなら、右派連合の中心は元首相を擁するフォルツァ・イタリアでしたけども、
今回の選挙で同盟が大躍進を遂げた事で、右派連合の内部で思わぬ逆転現象が起きてしまい、
こうなれば、勢いに乗る同盟側としても、連合内部での主導権を握りたくなる所ですし、
フォルツァ・イタリアが民主党と組んだ所で、この2党だけでは過半数には全く足りない為、
仮に左右大連立の流れになっても、同盟側は自らの価値を高くするべく、難癖を付けまくる気がします。
その為の揺さぶり策として、両党合わせれば過半数を上回る五つ星運動との連携をちらつかせた訳で、
まあ現実的に考えた場合、同盟と五つ星運動の連立というのも、正直まず有り得ない話だと思います。
玉川さんは、一緒くたに「ポピュリズム二党」と、おっしゃいますけど、
この2党はアメリカ大統領選挙で言うと、トランプとサンダースくらい左右に振れており、
極端な主張であっても、その内容はほぼ正反対なんです(ただ最近は両党とも主張を抑え気味)。

あと同盟は元々、豊かなイタリア北部地域の独立や自治を訴えていた地域政党が起源であり、
北部の稼ぎは北部で使うという税制改革案が支持されて、北部を基盤に議席数を獲得しました。
一方で五つ星運動は、「マフィア政治との決別」という理念からも解る通り、
混迷を続ける地域社会を改善すべく活動していて、特に南部で高い支持を得た政党ですから、
ぶっちゃけて言うと、北部の稼ぎを南部にバラ撒く政策を掲げています。
これがまだ、左右のイデオロギー対立くらいであれば、どこかで妥協点を探る事も可能ですが、
北部中心の同盟と、南部中心の五つ星運動が、政権運営で一致を見るのは恐らく不可能です・・・・
仮に有り得たとしても、それは期間限定での選挙管理内閣という形しか無いのでは無いでしょうか?

回の選挙では、政権安定の為に第一党に与えられていたボーナス議席を、
新興政党の台頭を阻害する目的で廃止した為、状況は更に混迷する結果となってしまいましたので、
同盟と五つ星運動が手を組み、選挙制度を改めた上で、解散して再選挙という可能性なら有るかも?
各党の連立交渉が全て不発に終われば、どのみち再選挙は避けられないでしょうし、
現行の制度下で再選挙を行った所で、どこかが過半数を占める事など難しいでしょうからね。


P.S.
でもまあ、ドイツの連邦議会選挙にしても、あの選挙結果であれば、
躍進を遂げた右翼政党「ドイツのための選択肢」を組む訳に行かない以上、
適当な所で妥協を図り、そのまま大連立を継続していくのが、現実的な選択肢であったものの、、
すったもんだで、なかなか合意に至らず、結局は組閣まで半年近く掛かっちゃいましたからねえ。
こうした政局に関しては、選挙以上に先が読めないのが実際の所だと思います。
ただ、選挙で政権が決まらず、選挙後の政局による合従連衡での政権誕生は、
権力闘争として野次馬的に傍観する時には楽しくても、
政治的に見た場合は、あまり健全な姿には映らないないんですよねえ・・・・

よく日本でも、「小選挙区制はダメだ。中選挙区制に戻せ」なんて意見が出ますけど、
あの頃は1.5大政党制だから上手く回ってたのであって、それを今の時代に復活させたら、
日本でも選挙自体より、選挙後の政局が本番になっちゃいますけど、そこまで理解しているのか否か?

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