徳翁導誉 【採点:85点】2007/12/29(土) 23:26 - 2004年に放送された43作目の大河ドラマ。
平均視聴率 17.4% 最高視聴率 26.3%
正直言って、この作品は大河ドラマの中でも1番と言っていいほど、 賛否両論が激しく別れた作品でしょうね。 若手や舞台役者ばかりで、大河らしからぬ地味な役者陣に加え、 歴史の重みを感じさせるような重厚な作りが一切ない、大河らしからぬ演出。 まさにこの作品は、「大河らしくない」大河ドラマだったんですよ。 だからと言って、歴史ドラマとしてなってないかと言えば、 決して、そう言った訳でもない。 結局、往年の大河ファンである中高年からは毛嫌いされる事が多く、 逆に、今まで大河ドラマを見た事がない層が、よく見ていた作品なんです。 そうだからこそ、賛否両論が激しく別れた作品なんですよね。
この作品を一言で現せば、「青春群像劇」です。 幕末という時代に輝いた若者たちの短な盛衰を描いている訳ですが、 この若者たちが妙に、現代と近い感覚の人間として描かれていて、 まずはそこで引っ掛かる人が居るとは思います。 まあ歴史劇なのですから、現代から遠く離れた昔の話という印象が強いと。
ただし幕末って、所詮は4〜5世代くらい前の話で、 祖父母の祖父母たちが生きていた時代なんですよねえ。 幕末という時代は、「祖父母から又聞き」できるくらい近い時代なんですよ。 歴史の1ページに名前を刻んでいる事で、大仰に捉えすぎているものの、 結局は、そんなに近い時代の20代の若者たちなんですから、 実際はまあ、あんな感じだったんじゃないかあ?とも思うんですけどねえ。 年齢の近い等身大の若手俳優たちに、新選組隊士を演じさせたのは良かったと思います。 還暦前後のベテラン俳優たちが、過剰なオーラを発しながら、 30歳前後で死んでいった隊士たちを演じるのは、前々から違和感がありましたし。
で、そうした若い役者たちを活かしていたのが、三谷幸喜の脚本ですね。 土方歳三役の山本耕史や、山南敬助役の堺雅人など、 長くなってしまうので、ここで敢えて一々と名前を上げはしませんが、 試衛館のメンバーたちや、それ以外の登場人物たちも、概ね好きでしたねえ。 個々のキャラクターも、それぞれしっかりと立ってましたし。 また、作中ではナレーションを全く入れず、 ストーリー部分だけで、話や時代背景を説明してしまうのは、 実際には凄く大変な事だと思いますが、それをうまくやってのけてましたからねえ。 そこはさすが、舞台出身の脚本家だと思いますよ。 言うなれば、1年間全49本の舞台脚本を書いている訳ですよね。 だからこそ、一話一話がちゃんと纏まっていて面白いかったのかと。
とは言え、そこが欠点と言えば欠点なんですよねえ。 一話一話はそれぞれ面白いんですが、 では、それを1年通して1つの作品として見た時どうなのか?と言われると、 しっかりした柱が、ドンと貫いている印象ではないんですよねえ。 いや勿論、それなりのもには仕上がってはいますけど。 楽しかった前半の多摩時代、のし上がっていく中盤の壬生時代があってこそ、 後半の悲劇的な流れが際立ってくるのでしょうし。
でもまあ、一話一話をここまでしっかりと書けて、 それでいて、通常の3ヶ月ドラマの4倍もある大河ドラマを、 しっかり軸まで据えて書ける作家が居るのかと問われれば・・・・ そう言った意味では、やはり三谷は凄い脚本家ですし、 ドラマ成功の鍵を最も大きく握っているのが脚本家である以上、 この「新選組!」と言う作品は、良い作品だと思いますよ。
悪い所を上げるとすれば、 主役の近藤勇役が、香取慎吾だったって事ですかねえ? しゃべらなければ、それなりに雰囲気はあったと思いますが、 やっぱり滑舌が悪い上に、演技の方もねえ・・・・ それに、他の仕事が忙しいからといって、 主役なのに、1人だけ屋内録りとかが多かったんですよねえ。 1年間もやる長編ドラマの主役なのですから、 そのあたりは、キチンとやって欲しかったです。 まあ、それでも良いと判断し、香取慎吾に依頼した三谷の責任でもあるのですが。
あとは・・・芹沢鴨を少し引っ張りすぎましたよねえ。 確かに、佐藤浩市の芹沢鴨は良かったですけど、 だからと言って、鴨の死を遅らせた事により、 一番の見せ場である池田屋が、参議院選挙の日と被ってしまい、 その影響で、無駄にもう1話使う事になったんですよねえ・・・・ 2話に渡った事で、池田屋は変に間延びしてしまいましたし、 こうして数回分を無駄に使ってしまった事で、 最後はどうしても駆け足な展開でしたからねえ。 1年の長丁場だからこそ、その辺のバランス調整も、 しっかり考えてもらいたかったです。
それと、これはドラマの面白さとは関係ないのですが、 鈴木三樹三郎が出てこなかったのが残念ですね。 伊東甲子太郎の実弟と言うだけでなく、 各隊の組長で登場しなかったのって、この人だけですし。 と、文章が長くなりすぎたので、そろそろ締めを(笑)。
まあ確かに、この「新選組!」と言う作品は、 今までの大河ドラマとは大きく違います。 重厚な雰囲気でもありませんし、豪華な役者陣も出てきません。 でも、ドラマとしては十分に面白いですし、 意外にも史実に関しては、細かな箇所でも忠実な表現が多く、 歴史ドラマとして、決して歴史を蔑ろにしたりもしていません。 また、複線の張り方や、小ネタの忍ばせ方もうまく、 そう言った小さな演出にまで目が行くと、作りの細かさに感心させられます。 賛否両論のある作品ですが、私はかなり好きですねえ。 と言う事で採点は、「独眼竜政宗」と並び、 私の中での好きな大河ドラマの2位に入る「85点」です。
|
神楽 【採点:70点】2007/12/30(日) 04:11 - 青春群像撃としては良く出来ていました。
反面ダイナミックさには欠けてしまっていました。
ただ、芹沢一派が楽しかったのは好印象。 (平山好きなのでちょっと納得いかない点もあるけど) 山南さんや伊東と言った、今までは嫌な奴、 って事でアッサリ片付けられた事も多かった人物を、 丁寧に書いてる点は良く出来ていたと思います。
ですが近藤先生の柔和さはマイナスポイントですね。 後は藤堂が好きだったのですが、斉藤に簡単にのされたり等、 ちょっと扱いが酷すぎやしませんか、って点もマイナス(笑 血湧き肉躍る殺伐とした哀愁のある青春劇が見たかったので、 もう少しピントが合っていれば、大満足だったのですが…
民放レベルでこれをやっていたら、もっと「おぉ!」と思えたのですが、 元が大河なだけに期待値が高すぎた反動か、少々残念でした。 悪くは無いのですが、かゆい所に手の届かない出来栄え、といった感じです。
という訳で不満点を改善してくれたら80〜90点、って事で70点に。
|
STOCK 【採点:1点】2008/5/17(土) 15:21 - 創作といえるレベルにない嘘満載の大罪作品。NHKが歴史物として放映するのは問題ありすぎるでしょう・・・
ファンタジーとか命題打ってくれないとまずいですよ。三谷作品は好きなものが多いのですが、これだけは許せない。
|
我楽太 【採点:95点】2008/6/18(水) 06:20 - 三谷作品は好きじゃないけど
この作品はとても好き。 DVDボックスを買いたくなるぐらい好きです。
歴史考証うんぬんが良く話題になりますがそれを差っぴいても 「若さ」が描けていてとてもよかったと思います
大河で泣けたのはこの作品だけ それだけ役者への感情移入がすごかったです。
そういう意味でも最高の作品であると思います。
|
公孫無智 【採点:95点】2008/7/16(水) 21:57 - 近年の大河では出色の出来かと思います。
大嘘が多いのは大学時代に歴史をやっていた者の一人として、 気になり・・・ませんね。むしろ「なるほど、有り得る展開やな」と。 一人ニヤニヤしてしまう大嘘が意図的にはめ込まれている気がします。 「その時歴史が動いた」みたいに、確信犯で嘘をさも真実の如く流すのは、 ちょっと許せない気分になりますが、大河ドラマはエンタテインメント。 歴史に詳しい人にニヤリとし、知らない人は素直に楽しめる・・・。 そんな脚本を書けるあたり、三谷氏は流石!
|