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[15640] プロ野球の球場史返信 削除
2012/1/15 (日) 00:37:08 徳翁導誉

> > > それにしても、規模も歴史も違うので一概に比べるべきでは無いかも知れませんけど、
> > > やはりプロ野球の球場は、Jリーグに比べて何処もアクセスが凄く良いですよねえ。

> > 戦前から甲子園やプロ化で知名度が有って建設するする時に、
> > 説得しやすいってのもあると思います。戦前からプロリーグが発足してたら、
> > 現在よりはスタジアムを立てるのが楽だったかも?

> プロ野球の場合は以前は電鉄系に会社がスポンサーになっているのが大きいでしょう。
> 南海・阪急・近鉄・阪神・西武などもありましたし、大昔だと国鉄もプロ野球を持っていましたよねぇ。

その他には、西鉄(現・西武)と東急(現・日本ハム)が有りましたね。
って、この辺の話を始めると、日本の戦後文化史になっちゃうのですが・・・・
長文になりそうですが、モノはついでなので書いてみます。

まず最初に、「戦前から」との一文が有りますが、
甲子園(当時の学制では中学野球)はまだしも、プロ野球の人気はイマイチでした。
戦前ですと、何より人気が高かったのは「東京六大学野球」であり、
プロ・スポーツの概念が未発達な当時は、プロ野球を軽蔑する人も多かった程で、
当時の人気や知名度は、現在の六大学野球とプロ野球との立ち位置を逆転させた感じです。
例えば野球競技での「天皇杯」など、そうした歴史上の経緯から現在でも、
プロ野球の優勝チームではなく、六大学野球の優勝チームに与えられてますからねえ。
それが大きく変わったのが、敗戦によるGHQの占領統治ですね。
俗に「3S政策」と呼ばれる「スポーツ」「スクリーン(映画)」「セックス(性風俗)」で、
GHQは大衆の不満に対するガス抜きと、アメリカ文化の浸透を図ったのですが、
スポーツでその恩恵を最も受けたのが、プロ野球だったと言う訳です。
アメリカはメジャーリーグの本場であり、日本も野球人気自体は元々高かったので。
その後は、テレビ中継の開始や、長嶋の巨人入団などでプロと六大学の人気が逆転し、
V9でジリジリ引き離しながら、王のホームラン世界記録で突き放したって感じですね。
(それに同調して、セ・リーグの人気上昇と、パ・リーグの人気低下が起こります)
逆説的に言うと、プロ野球が確固たる地位にあったのは、70年代後半から90年代なんです。

ですので、戦前から戦後直後の野球場事情と言うのは、
まずは、東に大学野球の「神宮」と、西に中学野球の「甲子園」とがあって、
あとは大学個々の野球場や、中学野球の地方予選をやる為の球場が主で、
プロ用の野球場として成功したのは「後楽園(現・東京ドーム)」くらいでしょうか?
ちなみに、この頃の力関係がまだ生き残っているのが、神宮と甲子園であり、
ヤクルトも阪神も、六大学野球や高校野球に球場使用の優先権があるんです。
特に神宮球場の方は、明治神宮と六大学が資金を出して建設・改修した球場なので。
だからこそ、戦後直後に人気の上がったプロ野球は、移動が大変だった事も有り、
全試合の半分近くが、後楽園球場で行われるという歪んだ状態でした。
他の球場はとなると、満潮時に水没してしまうような球場や、
学校や企業のグラウンドに、仮設ロープを張って作る臨時球場とかでしたので。

そこで、プロ野球の人気上昇と、参入球団の増加を受けて、
各地に新球場が作られるようになるんです。
建設用地の方は、敗戦によって帝国陸海軍が消滅し、
GHQによる占領統治も終わりに差し掛かっていたので、
開放された「軍用地」が結構あったんですよ。
まあ戦前から神宮や後楽園などは、そうした軍用地の跡に建てられてましたし。
それ以外の用地ですと、鉄道系が親会社の土地開発によるモノですね。
東京−横浜間や、大阪−神戸間など、近距離の大都市間を結ぶ鉄道は別として、
都心と郊外とを結ぶ鉄道は、郊外の側にも集客を望めるモノを欲したんです。
観光地でもあれば良いのですが、そう都合良くばかりも行かないので、
「だったら自分たちで作ればいい」と出来たのが、駅近の球場だったという訳です。
自前で球場を作れば使用料が掛からないので、入場料が直接入ってきますし、
更には都心−球場間で太い動線が出来る事で、その区間を住宅地として開発でき、
鉄道会社にとって球団経営は、まさにステイタスと実益が共存するおいしい事業でした。
だからこそ、先述のように鉄道系の球団が以前はたくさんあった訳です。
無料で観戦チケットをバラ撒いても、往復の電車賃で利益が出たりもしましたし。
一方、そうした実利面の無かった東急や国鉄は、早々に球界から撤退しましたけども。

とは言え、一時は隆盛を極めた鉄道系の球団も、今では阪神と西武の2球団を残すのみです。
高度経済成長により、都市開発の波が郊外にまで及んだ事で、
特別な集客施設など無くても、一般の通勤・通学客で溢れるようになりましたし、
商業地や住宅地になってしまうと、逆に球場は騒音公害の対象へと変わってしまいます。
更に高度経済成長期が終わると、本体の鉄道事業が頭打ちとなり、
本業ではない球団経営にカネを使う事に対しても、厳しい目が向けられるようになり、
阪神を除き、鉄道球団が不人気のパ・リーグに集中していた事も、それを更に増大させます。
そうなってしまえば、球団はもう「お荷物」ですし、球場はおいしい「再開発地」です。
駅近で面積のある球場は、バブル期において格好の開発ターゲットであり、
今では大型商業施設・高層マンション・オフィスビル・私立学校などに化けてしまいました。
(ちなみに東京では、東京五輪開催の為に潰された球場とかが有りました)
近鉄も最後まで頑張ったものの、東京ドームに対抗して大阪の行政と大企業が「大阪ドーム」を作り、
沿線でも無い近鉄が使う事にされた為、球場使用料は高いは、運賃は入らないはで、結局撤退。
今や残るのは、戦前から学生野球の聖地であり、人気球団の阪神を抱える「甲子園球場」と、
高度成長後に、遅れて球界参入した西武が、土地開発で山間部に作った「西武ドーム」だけですね。
前者は大黒字なので、後者は売ると赤字増なので、このままと言った所でしょうか?

では、神宮・甲子園・東京ドーム・西武ドーム以外の球場はどうかと言えば、
1978年に出来た横浜スタジアムと、普通の県営球場を改修した宮城球場を除けば、
残りの6球場は、平成になって以降に建てられた比較的に新しい球場です。
ここでキーワードになるのが「バブル景気」ですね。
前述のように、球団を売り払い、球場は再開発した所もあったりしましたが、
まあ大方は、球場も老朽化したし、手狭だし、新しいのを作ってしまおうという面と、
バブル後に埋め立て地などが余ったので、球場でも建ててお茶を濁そうという面ですね。
この辺の、良くも悪くもバブル景気の影響を受けたのは、Jリーグも同じですね。
バブルの後押しが無ければプロ化は困難でしたし、バブルが崩壊したからこその地域密着でしたし。
とは言え、野球が新球場で、サッカーがプロ化なら、
出足の早さ(歴史の長さ)から言って、野球の方が得だったかと言えば、正直難しい所です。

現時点でのプロ野球とJリーグを比べてみても、
1試合の平均観客数も1.5倍で、1週間の試合数が6倍(うち4日が平日)なので、
現実問題として、プロ野球の球場は大都市圏で、交通利便の高い所しか建設不可能なので、
アクセス面は確かに良いのですが、使い勝手や見やすさの面から言うと・・・・
バブル期を前後して計画が進んだ為に、多目的施設としてあれこれ詰め込み、
結局は野球場としても使い難い、無用の長物が大量に出来てしまったんですよ。
サッカーに例えれば、宮城スタジアムや日産スタジアムだらけみたいな感じです(笑)。
そもそも、本拠地の12球場の中で、天然芝なのは甲子園と広島市民球場だけですし、
パ・リーグに至っては、天然芝ゼロで、ドーム球場が4つですからねえ・・・・
しかも、膨大な建設費と好立地から、球場使用料が本当に高いんです!!
阪神や中日のように、自前の球場を持っていれば、収入も格段に多いのですが、
相手が民間企業とかですと、信じられないほど高額になります(福岡ドームは年間48億円)。
ですので、放映権料が落ち込む巨人などは、自前の球場を欲しがってますし、
先日、横浜が売りに出されたのも、使用料の膨大な出費が最大の事情だったりします。
恐らく、Jリーグで最も高いであろう浦和レッズの使用料でも、年間2億円だったかな?
ぶっちゃけ、契約内容が鬼な球場が多くて、どう頑張ったって黒字にならない球団が多いんです。
歴史がある事で優遇されてる面はあるものの、下手をするとそれ以上に巨大なデメリット面が・・・・

ちなみに札幌ドーム以外でも、野球場でサッカーは出来たりするので、
その気になれば、プロ野球とJリーグで併用するのも不可能では有りません。
ジュビロ磐田の練習場など、元々はヤマハの野球場でしたし。
「多目的施設」と言う事で、球技用に座席が移動できる球場も多いですし。
 (実例:横浜スタジアム)http://www.yokokana.net/yokohama/yoko0405.jpg
Jリーグ創世記には、ヴェルディが東京ドームで、ガンバが甲子園で試合をした事が有ります。
また、ジーコJAPANの時には、サンフランシスコ・ジャイアンツの球場でアメリカ戦をやりましたね。
って、やってやれない事は無いだけで、本当にやろうとするのは難しいでしょうが・・・・
アメフトは野球場で試合をする事が多いですが、それは人工芝でやる事も多いスポーツだからで、
サッカーですと、ヴェルディが東京ドームでやった時など、ロール状の天然芝を敷いたものの、
費用は掛かるは、見た目は悪いは、芝生臭いはで、散々だった記憶があります。
アメリカW杯でも、同様の方法を用いた会場がありましたが、観客の評価も同様でした。
まあ、Jリーグが条件を緩和して「人工芝でもOK」にすれば、少しは現実味も増すかも?
私も少し触れた事がありますが、最先端の人工芝は、下手な天然芝より良かったりします。
あのレベルになると、あとは更に下のクッション性の部分ですよねえ・・・・
って、多目的施設のままだと人工芝を剥がす事も有るので、それも難しそうですが。
ちなみに、野球場で人工芝でサッカーとなると、Jリーグ開幕の数年前に、
日本代表がマンチェスター・ユナイテッドと、神宮球場で試合をした事があるらしいです(笑)。

と、ここまで書くと、Jリーグのサッカー・スタジアム事情や、
英独伊西など欧州各国のサッカー・スタジアム事情とその歴史、
そして、大学スポーツまで巨大なアメリカのスタジアム事情などとも比較したい所ですが、
さすがに、プロ野球の球場史を簡単に書くだけでも長文になったので、今回はここまでに(笑)。
最近のスタジアム建設は、都市計画に組み込まれて進む事も多いので、語り甲斐はありますけど、
まあ最後に、こんなの↓を貼りつつ、お茶を濁して終える事にします。
【仙台スタジアムの創設について】
http://www.miyagi-sports.net/vvn/kenshu/report-07.pdf#page=3


> > 現時点ですら、Jリーグ側からアクセス面などで苦言を呈されている上に、
> > 国体用の改修が済んでも、新制度ではJ1のスタジアム基準を満たさないと言われてますし。
> > ただ他の地域に比べれば、移転先の候補は結構ありますよねえ?(実際にするかは別として)
> > って、これ以上書くと具体的な地名とか出て来ちゃうんで、とりあえず止めときますが。

> 国体用の改修でも、だめですか・・・・
> こうなったら、早期のスタジアム移転だ。
> 残念ながらそれは不可能ですが・・・・・・

キャパシティ面は改修で充分なものの、アクセス面は改修で解決されないので・・・・
国体用に道路を拡張し、駐車場を増やすのなら、話は別でしょうけど、
国体でそこまでやる事は、まず有り得ないですからねえ。
ただ、スタジアム移転が不可能という事は無いと思いますよ(もちろん困難ですが)。
前述の通り、移転候補先だけは既に幾つか挙げられている状態ですし、
あとはキッカケですよねえ(それが現状で最大の障害でしょうけども)。
今すぐには無理でも、鳥取で岡野が担った役割を、あの代表選手に担ってもらうとか?


> > > 新潟駅からビッグスワンへの地下鉄ができないかと考えているところです。
> > > 路面電車やモノレールでもいいですね。

> > 個人的には、そうした都市計画などを夢想するのは好きなのですが(笑)、
> > ただ現実問題としては、地下鉄は建設費も維持費も膨大に掛かる為、
> > 横浜市レベルですら四苦八苦な状態を考えると、新潟市の規模では・・・・
> > しかも新潟市は川が多くて地盤が悪いので、経費は通常以上に掛かるでしょうし。
> > またモノレールに関しても、地下鉄ほどでは無いものの、
> > しっかりしたモノを作れば経費が掛かるので、千葉市とかは苦しんでますね。
> > そう考えると、「LRT」や「BRT」の方が現実的かつ妥当な所かと。

> 確かに新潟市は川の土砂が積もってできたため地盤がとても軟弱で、
> 財政的にも問題があります。
> 新交通システムを作るとすると、
> どうしても道路が基幹になってしまいますね。

その一方で新潟市は、やはり「積雪」の問題が有りますからねえ。
確かに、山間部などと比べれば少ないとは言え、
数センチの積雪でも交通網が混乱する東京などとは比較にならないでしょうし、
まあその辺は、路面電車の札幌市電や函館市電などが参考になるのでしょうか?
財政的に余裕があれば、積雪のある所では地下鉄がベストなんでしょうけど。

> 都市部に水田なども多く、インフラ整備は他の政令市と比べても遅い方です。
う〜ん、まあ、こう言っては何なのですが、
平成の大合併による期間限定の特例処置を受けて誕生した政令指定都市は、
それ以前の政令市と比べると、やはり基礎体力が落ちますからねえ。
ですので、同じ枠組みだからと言って、一概に並べ比べられるモノでは無いかと。
逆に言えば、同じく特例枠の「相模原・静岡・浜松・堺・岡山・熊本」と比べれば、
新潟市のインフラ整備が、そこまで遅れているとは言えないかも?

また、政令市になったからと言って、急激に人口や総生産が増加する訳でも無いですし、
その辺を期待するなら、道州制が導入されて、北陸州の州都になる方が現実的かも?
何だかんだ言って、北の外れにある札幌が、あそこまでの大都市になれたのも、
函館県・札幌県・根室県の3県が合併して出来た北海道の州都だからという面もあるので。
って、この辺のエゴを剥き出し州都争奪戦が繰り広げられると、
道州制による地方分権の実現どころか、血みどろの展開しか待ってなさそうですが(笑)。

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