| WBC予想大会の方で、ちょこちょこと話題に上っていたのですが、
少し脱線気味になって来たので、掲示板の方で改めてスレッドを立ててみました。
> イスラム圏で最初の五輪
> 東西の架け橋
> どうしても、開催をする意味としてはイスタンブールのほうに魅力を感じてしまいます。
> 東京に勝ち目はあるのでしょうか?
毎度貼ってますが、海外ブックメーカーの各社オッズ↓は以下の通り。
1.6倍 1.6倍 1.7倍 1.6倍 1.7倍 1.6倍 東京(日本)
3.0倍 3.0倍 3.2倍 3.0倍 3.0倍 2.9倍 イスタンブール(トルコ)
5.0倍 5.5倍 4.5倍 5.0倍 5.0倍 14.3倍 マドリード(スペイン)
http://www.oddschecker.com/olympics/olympics/olympic-individual-specials/2020-olympics/who-will-host
もちろん実際に決めるのはIOC委員なので、世間の下馬評など当てにはなりませんが、
とりあえず、世界では一般的にどう見られているかの参考程度にはなると思います。
今回は有力な都市に乏しい為、やはり東京にとっては最大のチャンスですよ!!
まあ確かに、イスタンブールの「イスラム圏初」「ヨーロッパとアジアの融合」というのは、一見利点に思えます。
しかし、実際に投票するIOC内部の事を考えると、この2点が足枷にもなりかねないんですよねえ・・・・
まず最初に「イスラム圏初」というのは、同じく五輪開催を目指すカタールやエジプトにとっては、
自分たちの売りを奪われる為、イスタンブールがイスラム票を集められるかは正直微妙だと思うんです。
イスラム圏って事だけに目を奪われると忘れがちですが、中東の大部分を占めるのはアラブ圏であり、
非アラブのトルコやイランが、「同じイスラムだから」とアラブから支持を得るのは、そう容易ではないですし。
また、「ヨーロッパとアジアの融合」とは言っても、トルコはヨーロッパ五輪委員会に所属している訳で、
同じ欧州にはマドリード(スペイン)が居る上に、2024年の五輪開催を目指すパリ(フランス)まで居ます。
2012年の招致でロンドンに惜敗し、2024年には前回開催から100周年を迎えるパリは、招致に物凄く熱心なものの、
しかし「2大会連続で同大陸は不可」という不文律から、2020年が欧州開催だとパリは招致自体が困難になります。
そこで日本側は、2024年はパリを応援する代わりに、2020年は東京を応援してもらおうと動いてるらしいですね。
IOC委員111名の内訳は、欧州47人・アジア24人・南北アメリカ20人・アフリカ15人・オセアニア5人と、
全体的には欧州が圧倒的に多いので、ここをトルコ派・スペイン派・フランス派に分断したい所です。
それと出来れば、今回の招致競争には無関係なアメリカやアフリカの票も欲しいですが、
2020年が欧州開催なら2024年はアメリカ開催の可能性が上がるので、中南米との分断工作が必要かも?
あとアフリカ票は、アフリカの五輪放映権を未だにヨーロッパが握ってるような現状では厳しいかな?
・・・って、まず東京はその前に、キチンとアジア票を固めるのが重要ですけどね(笑)。
ちなみに、一般的には下馬評の低いスペインのマドリードですが、
IOC内部の事情で言うと、スペインっていうのは実は結構強いんですよ!!
何故なら、20年に渡りIOCに君臨して五輪の商業化を押し進めた前会長が、スペイン人のサマランチだからです。
1992年にバルセロナで五輪が開催されたのも、彼の故郷であるというのが最大の理由ですし、
会長職を退任して以降も、IOC委員の中には彼からいろいろと恩恵を受けたサマランチ・チルドレンが少なくなく、
2016年の招致で下馬評の低いマドリードがリオとの最終決戦まで残ったのも、それが最大の理由と言われています。
しかし、そのサマランチも2010年に亡くなりましたので、サマランチ固定票がどうなるか今回は読めない所ですね。
一応IOCには、彼の息子であるサマランチJr.が居ますが、息子がどの程度の票を受け継げたかは未知数ですし。
とは言え、サマランチJr.は111名もいるIOC委員の中でも、わずか15名しかいない理事会のメンバーであり、
レスリング競技の除外問題で、除外候補の最右翼と見られていた近代五種が残ったのも、
それを決める理事会に、近代五種の副会長でもあるサマランチJr.が名を連ねていた為です。
五輪権益を継がせるべくIOC用の肩書きを欲したサマランチ親子(近代五種の競技経験なし)と、
五輪からの除外危機にさらされて後ろ盾を欲した近代五種との相互依存関係ですね、これは。
ですが一方で、こうしたサマランチ勢力に反発する委員というのも決して少なく無く、
最終決戦でマドリードと東京が残った際には、反サマランチ票が得られるので、東京は却って有利かも知れません。
除外競技はわずか14名の理事会(会長は中立的立場で不参加)で決められたので、影響力も行使できましたが、
五輪開催地は100名以上が投票するIOC総会で決められ、サマランチ票は多分その中の30票程度ですからねえ。
そうした事からも日本は、レスリング存続を旗印に、競争相手でもトルコとも手を組みました。
表向きは「開催候補である日本とトルコが共に訴えれば、レスリング存続にも効果がある」との事ですが、
裏側では「反サマランチ(=反マドリード五輪)同盟」と見る事も出来ますね。
要するに、どちらか一方が最終決戦まで残れなかった場合、お互いに反スペインで協力し合うと。
確かにスペインにとっては、レスリングの有無は大した問題ではありませんが、
レスリングが国技であるトルコにとって、レスリング除外は日本以上に深刻な問題だったりします。
また、レスリング競技の存続を訴える国は多いですが、そうした国はマドリードには投票しないかと?
嫌な話ですが、レスリング存続をダシに、反マドリード票を固めるのも、戦略的には重要になるでしょうね。
しかしそれは反面で、レスリング存続を人質に取られていると見る事も出来ます。
レスリングを除外候補に決めたのは、サマランチJr.を含む14名の理事会メンバー(会長は不参加)ですが、
レスリングや野球などの中から、2020年五輪で加える1競技を決めるのも、この14名です。
簡単に言えば、「レスリングを存続させる替わりに、2020年はマドリードに」という事も無いとは言い切れません。
そもそも、除外候補の1競技を選ぶ段階で、初めからレスリングが最多得票というのが腑に落ちないんですよね。
テコンドーや近代五種のロビー活動などは報じられてますが、それは存続理由であってレスリング除外とは関係なく、
西欧のメダル数や女性競技人口の少なさ、人気の低さなどの理由も、他競技でもある話なので決定打にはなりません。
これがまだ投票の過程でレスリングが残り、最終的に消去法でそうした結果となったならまだしも、
票数の推移↓を見ると、最初からレスリングが狙い撃ちされてるのは明らかなんですよねえ・・・・
レスリング 5票→7票 →6票→8票【決定】
近代五種 5票→4票 →5票→3票
ホッケー 2票→1票→6票→3票→3票
テコンドー 1票→1票→5票→0票
カヌー 1票→1票→3票
その他 0票
※ 最初は全競技が対象で、その後は最下位を外し、過半数(8/14票)が出るまで続ける ※
「様々な国がメダルを獲得する競技で何故?」との疑問も、だからこそ人質になると考えれば合点も行きます。
とは言え、1競技を選ぶIOC理事会は5月で、五輪開催地を選ぶIOC総会は9月なので、
(レスリング除外でマドリード決定と断言する人は、理事会と総会の違いを認識して無いかと)
この様な真似は却って、反サマランチの意気を高めるだけのような気がするんですよねえ・・・・
しかも今年の総会は、退任するロゲ会長の後任選挙もありますので、
強権的に行って反感を買い過ぎると、下手をすれば却って排斥される危険性もあるのに?
で、東京の勝算としては、残酷ですが共闘関係のトルコが最初に落ちてくれると有利ですです(笑)。
その方が最終決戦になった時で、いろいろな所から消極的な支持票を得られそうなので。
逆に言うと、最初にマドリードが落ち、東京とイスタンブールが最終決戦に残ってしまうと、
マドリード支持票の行く先が、「イスラム圏初」という名分が立つ方へと流れてしまう危険性があります。
前述のような理由から、イスラム圏からの票はあまり怖くないものの、こうした消去法的な支持は結構怖いです。
各委員とも第1候補はちゃんと決めていても、それが落ちて以降の投票は、かなり流動的でしょうからねえ。
過去の例を見ても、「○○が落選したら××へ」という働き掛けこそが、最終的な勝敗を大きく左右しており、
実際、2016年のリオ五輪にしても、最初から「南米初」が各委員の強い支持を集めていた訳ではなく、
最初に同じアメリカ大陸のシカゴが落ち、最後にサマランチのマドリードが残った時に、他都市推しの流動票が、
放映権(アメリカと時差なし)や反サマランチが裏に有りつつ、「南米初」という名分に乗った部分もあるので。
あと個人的には、できれば「イスラム圏初」の栄誉は、エジプトにあげたい気分もありますね(笑)。
アラブの盟主であるエジプトなら国力もあり、イスラム圏初だけでなくアフリカ大陸初の開催になる上に、
アラブの春以降の混乱から民主化と経済を安定させるにも、五輪開催が絶好の機会になりますし、
そして何よりエジプトは五輪招致の活動を始めてから、実は既に100年が経過しているので・・・・
第2次大戦で中止された1940年の東京五輪でも、エジプトは立候補してましたし、
第1次大戦で中止された1916年のベルリン五輪の時にも、既にエジプトは立候補していました。
五輪招致の歴史で言えば日本などよりもずっと先輩ですし、単純に感情論ですが、
そろそろ開催させてあげたいですし、風景的にもエジプトで開催される五輪を見てみたい!!(笑)
ちなみに、夏のエジプトは暑そうな気がしますが、地中海沿岸なら却って東京よりも過ごし易かったりします。
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