▽ 2016/3/18 (金) 19:24:50 ▽ 徳翁導誉 |
| > 「グーグルの最新人工知能が囲碁プロに勝利」
> http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160128/k10010388481000.html
> まあ「プロに勝った」と言っても、実力が測れない欧州のプロらしいのですが、
> しかし3月には、トップ棋士の1人で韓国のイ・セドルと5番勝負をするとの事!!
> 私も別に、囲碁の世界とかには詳しくないものの、
> 国際棋戦で何度も優勝している彼の名は、私でも知ってるくらいですから、
> そんな世界トップクラスの棋士といきなり対決というのが、
> AI研究の進歩スピードも、対局を受けたイ・セドルの決断も、
> その両方を可能にしたGoogleの財力も、いろんな意味で凄いです(笑)。
> 2年前に「囲碁電王戦」↓を見た時には、「まだまだ先」って印象でしたしね。
> http://www9.nhk.or.jp/nw9/marugoto/2014/02/0211.html
今年はリオ五輪に、EURO&コパ、米大統領選など、まだまだイベント盛り沢山ですけど、
何だか既に、今年最大のインパクトが来てしまった感じです(笑)。
4年に1度の大イベントに比べ、こちらは人類史の1ページに記される出来事でしたので。
(もしも噂通りに北方領土が帰って来れば、個人的にはそれを上回るかも知れませんが?)
いや〜、本当にこの1週間は「トップ棋士vs.人工知能」の囲碁5番勝負が熱かった!!
1局1局の結果で、まさにジェット・コースターで振り回されるような7日間でしたね。
ここ数年は春の恒例行事だった、5対5マッチの団体戦「将棋電王戦」が、
昨年限りで終了していただけに(今年からは互いのトーナメント優勝者が戦う方式に)、
今年はコチラの囲碁対決に期待していたのですが、まさかここまで興奮する展開になろうとは!?
「プロ棋士の平均レベルに達するには、まだ10年掛かる」と見られていた囲碁のAI。
1997年にチェスが、2013年に将棋がコンピュータの前に屈し、ある意味で囲碁は最後の砦でした。
しかしそれが今年の1月末、Google子会社が開発した「アルファ碁」が、
欧州王者を相手に5戦全勝した事実が報じられると共に、
3月上旬にはトップ棋士の1人である韓国のイ・セドルとの5番勝負を行う事を発表。
(イ・セドルは、日本NHK・韓国KBS・中国CCTVが共催する「テレビ囲碁アジア選手権」も2連覇中)
常識的に言えば、プロ平均ですら「まだ10年掛かる」なんて状態なのですから、
いきなりトップ棋士を倒すなど困難とは思うものの、そこは天下のGoogleですからねえ・・・・
大学や研究機関でしたら、惨敗しても成果はあるでしょうけど、
Googleみたいな大企業が勝負を挑むとなれば、惨敗では意味が無いでしょうし、
一般の棋戦と違って、「どちらかが先に3勝しても5戦は全て行う」とした以上は、
「5戦すれば必ず1勝は出来る」という自信の表れだと感じて、本当に開幕が待ち遠しかったです。
そして、いざ幕が開いてみると・・・第1戦でいきなりコンピューター側の勝利!!
他の囲碁AIに比べて、一足飛びどころか二足飛びな進化を見せ付けられた感じでしたね。
人工知能の発達スピードで言えば、15年から20年ほど針を進められた気分で、
そのあまりの速さに、最初は興奮し、続いて震えが来て、
最後には様々な感情が入り混じり、何とも言えない悔しさが湧き上がりました・・・・
(個人的な感情の内訳を書き連ねると、いろいろ無駄に長くなるので省略・笑)
将棋のAIで言えば、「ボナンザvs.渡辺竜王」のタイミングで、「GPS」で登場した衝撃です。
生ける伝説だった呉清源が、1年ほど前に100歳で亡くなりましたけど、
囲碁界の大事件を見ずして不帰の客となったのは、幸運だったのか?不運だったのか?
「もし呉清源が生きていれば、どんなコメントを残しただろうか」と、ふと思ってしまいましたね。
それと、チェスで欧米人が、将棋で日本人が、既に味わった衝撃を、
今まさに中国人や韓国人は味わっているんだなぁ、という気持ちも(苦笑)。
続いて第2戦・第3戦とアルファ碁が勝利を重ね、内容的にも次第に圧勝に。
この頃になると、「アルファ碁の実力レベル」がどれだけ高いか想像が着かなくなり、
凄さと怖さが綯い交ぜとなって、「15〜20年どころか30年は進めたのか!?」と感じ始めると、
消化試合となった残り2戦は、「底知れぬAIの底を知りたい」という思いが次第に強くなり、
勝敗が決しても5戦行うルールに感謝すると共に、その方向でイ・セドルを応援し出しました。
それと共に、人工知能の性能が、全人類の知能を超えるとされる「2045年問題」が、
にわかにリアリティーをもって迫ってきている実感を抱かされました・・・・
(でも個人的には、そんなコンピューターの進化に、怖さを遥かに上回る好奇心が・笑)
あと、史上初の7冠独占に挑む井山の「十段戦」も、今年で4年目を迎える国内の「電聖戦」も、
YouTubeでの対局中継中に宣伝が流される度に、何だか凄く物悲しい気分に・・・・
人類の囲碁理解レベルも、日本のAI研究レベルも、一瞬で超越されてしまった感じでしたからね。
ですが第4戦、アルファ碁の自滅によってイ・セドル・・・というか人類が初勝利(笑)。
この敗戦により、天井知らずで計り切れなかったアルファ碁の実力が、ようやく解り出します。
自爆の原因が、モンテカルロ法の弱点によるモノか、水平線効果によるモノかは解りませんが、
Googleの画像検索なども用いられる「深層学習(ディープ・ラーニング)」を応用したとは言っても、
従来ソフトと変わらない欠点部分を見せられると、Googleのハード面が化け物クラスなだけで、
ソフト面の進化で言えば、他の囲碁AIの研究レベルを置き去りにする程では無いのかな?と感じました。
逆に言えば、イ・セドルも舐めて掛からず、事前にソフト対策を練って挑んでいれば、
ここまでアルファ碁の幻想が拡大せずに済んだのではないか?とも(苦笑)。
でもまあ、未知の怪物の実態が見えてきた事は嬉しかった反面、
想像を絶するような怪物の出現でなかった事実は、かなり残念な思いも・・・・
それでも、プロ相手に2子や3子のレベルまで来た現行の囲碁AIが、
「スパコンを使えば、どこまで行けるか?」という、従来の疑問を氷解させてはくれました(笑)。
そして最後の第5戦。
長手数の読みに弱いコンピューターの弱点を突き、序盤はイ・セドルが優勢に進めるも、
却って慎重になり過ぎた所をアルファ碁に攻められ、最終局は再びAI側の勝利で全5戦が終了。
AIの弱点を突かれても勝ち得た結果は、第4戦で落とした評価の回復に繋がると共に、
最後は、人間にあってAIにはない「心理面」が勝敗に影響した考えると、それはそれで面白い結果に。
まあ3連勝した時点での、得体の知れぬ幻影ぶりを思えば、スケール・ダウンしたとは言え、
それでも元々の前評判では、「本当にAI側が1勝でも出来るのか?」なんて具合でしたし、
既に全盛期は過ぎたとは言え、未だ世界でも五指に入る実力者を相手に、
最終結果はAI側の「4勝1敗」という結果は、やはり途轍もないモノだったと思います!!
技術的な革新性よりも、Googleという大企業の誇る資金力と人材力がモノを言ったかも知れませんが、
それでも時計の針を10〜15年は早めたのは事実だと思いますし、
Google側からすれば、将来的にAI技術を自動運転や医療診断へ活用する為のデモンストレーションであり、
囲碁の試合内容よりも、世間に対する「4勝1敗」というニュース価値の方が大きいでしょうからねえ。
そもそもアルファ碁自体は、囲碁専用のAIを研究して生まれた訳ではなく、
深層学習の応用先として、たまたま囲碁が選ばれただけですし・・・・
って、それに対して、囲碁側が被ったダメージは大き過ぎるかも知れませんが(笑)。
チェスや将棋の場合と違い、今回コンピュータが見せた人間を上回る「大局観」は、
人間側のレベル・アップを図る上で、果たして参考になるのかどうか???
この大局観みたいな分野で、人間がコンピューターに上回れ、突き放されるのは、
衝撃的であると同時に、ある意味では必然なのかも知れませんが、
(脳では追い付かない計算を、イメージで捉えるのが大局観だとすれば、最後は計算に帰すので)
この成果が人間の脳にもフィード・バックされ得るのか否かは、かなり興味深い題材でもあります。
チェスや将棋では、棋士がAIと組むと、棋士単独やAI単独よりも棋力がアップするのですが、
そうしたアドバンスド化が今後は囲碁でも起きるとして、チェスや将棋より影響が大きいか?小さいか?
結局は、人類にとって有効な道具となるAIを、如何に上手く使いこなせるようになるかですよね?
これは囲碁などに限らず、これから様々な分野で起きてくる事だと思います。
そう考えると、攻殻機動隊の世界も、案外すぐ側にまで近付いて来ているのかも知れません。
・・・と、1ヵ月半前に清原が覚醒剤で逮捕されて以降、
私が個人的に花粉症で外出を控え、読書モードに突入している事もあり、
各薬物の効能や歴史から始まり、脳における快感・中毒・依存症のメカニズム、脳内での神経の働き、
動物と人間の比較、意識や思考の仕組み、工学的な脳神経の解析や操作、そして脳とAIの接続などなど、
関心の方向性が「風が吹けば、桶屋が儲かる」的に、ドンドンと脱線し続けている最中なので、
今回の囲碁5番勝負は、発表時から楽しみにしてはいたものの、
ちょうどこのタイミングで行われた事で、個人的には更にテンションを上がったかも?
それこそ「清原が逮捕されれば、攻殻世界観の実現を夢想する」状態に陥ってました(笑)。
そういえば、東京五輪の開催に合わせて企画された
頭脳五輪・ロボット五輪・サイボーグ五輪などの計画は、現状でどうなってるんでしょ?
P.S.
全5局の日本語版の中継番組は、既に有料化してしまいましたので、
YouTubeの公式英語版の方を、動画紹介所に貼っておきました。
・・・って、ついでですから、こちらにもリンク↓を貼っておきますかね。
第1局 https://www.youtube.com/watch?v=vFr3K2DORc8
第2局 https://www.youtube.com/watch?v=l-GsfyVCBu0
第3局 https://www.youtube.com/watch?v=qUAmTYHEyM8
第4局 https://www.youtube.com/watch?v=yCALyQRN3hw
第5局 https://www.youtube.com/watch?v=mzpW10DPHeQ
(アメリカ出身なので当然なのに、流暢に英語を話すレドモンド九段に違和感が・笑)
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