| > > 先週まで5週連続で行われていた「電王戦・5番勝負」が決着しましたね。
> > http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/result.html
> > (今からでも録画中継の視聴が可能ですので、関心のある方には是非オススメ)
> 「将棋世界」を毎月買っている筋金入りの将棋ファンの私がこの話にくらいつきますよ。
電王戦終了から1週間経っても、何とも言えない複雑な感情が整理できずに燻っていて、
それを発散させる目的も含みつつ、少々独り善がりな文章を書いた為、
正直言うと、返信が来るとはあまり考えてませんでした(しかも本格的な人から)。
ある意味では、嬉しい誤算です(笑)。
> 今回の電王戦、とても楽しかったですね。私の戦前の予想では、
> 勝ち・・・三浦八段、船江五段
> 負け・・・阿部四段、佐藤四段、塚田八段
> だったのですが、コンピュータソフトは予想以上に強かったです。
戦前から、コンピューター側が勝ち越すとの予想だったんですか!?
私などあまり詳しくは無いので、2勝すれば上出来かな?と考えてました。
具体的には、「1〜3戦で1つ、4戦目の塚田九段でもう1つ」って感じで。
> 緒戦の阿部四段vs習甦では阿部四段がソフトの穴を突いて勝利。
> この戦いではコンピュータソフトに予想以上に穴が多いことが分かったので、
> これは人間側の4,5勝となるかと思いましたが、2戦目以降のコンピュータソフトは
> とても手強かったです。
初戦の後は、そんな感じでしたね(私は棋力が無いので空気感しか掴めませんが)。
逆に言えば、初戦でコンピューター側の穴の大きさが顕在化したからこそ、
2戦目にプロ側が負けた時は、「やってしまった」感が強かった印象でした。
もちろん、コンピューター側だって、毎回ソフトが変わるので、
初戦の印象だけで一概には言えないという事は、重々に解ってはいたものの、
やはり幾らかは、空気が緩んだ部分はあったかのように感じます・・・・
> 2戦目、3戦目は、コンピュータからあえて定石を外してねじりあいになり、
> 途中では人間側有利の場面もあったものの、結局はコンピュータソフトが底力を見せました。
> とくに船江五段は若手の有望株だったので、船江五段の敗北は衝撃的だったのですね。
2戦目の「やってしまった」感が一掃されたのが、この3戦目の結果だと思います。
3戦目に登場した船江五段が、若手有望株なのは認識していたので、
ここでの連敗で一気に、「これはヤバい」という空気が漂うと共に、
最も分が悪いと見られていたベテランの塚田九段に対する、
元王座としての経験面や精神面に期待する空気が、俄然と高まったようにも感じました。
> ただ、トッププロが同じ局面を持つと、有利な場面からそのまま押し切れたような気がします。
> ちなみにこの2戦目、3戦目のコンピュータソフトの指し手はとても人間臭く、
> もし人間同士の棋譜だと言われても「いい勝負だなあ」という評価が返ってくるかと思います。
コンピューターはもう、そんなレベルにまで達しているんですね!!
現在の人工知能は、過去の対戦棋譜を用いた評価関数の使用が主流らしいので、
つまりは名棋士の手を真似ながら学び取るので、人間の棋譜に近付くのも道理だとは言えますが。
しかし、これがコンピューターの自己対戦による強化学習が主流となっていくと、
「人間臭い指し手」という評価から、「人間離れした指し手」という評価に変わって来るかも?
逆に言えば、「想像しない手を打つ」といわれる羽生が、人間離れした手を打つ相手と対峙した時、
良い勝負になるのか? もしくは、どちらかが破綻するのか? 逆にちょっと見てみたい(笑)。
> 管理人さんご指摘の通り、塚田八段はこのメンバーの中では棋力に若干劣るものの、
> メンタルという面では戦前から善戦が予想されていました。
> 感情を持たないコンピュータ相手では、人間側は最後まで体力、気力を維持するのが
> 大事だと思われていましたので。
> 「棋譜を汚す」というプロ棋士にとって最大の屈辱を受けながらも、
> 団体戦ということで引き分けに持ち込んだ塚田八段は人間的にすごいと思いました。
期待された「勝利」は得られなかったものの、
期待された「経験面」や「精神面」の強さは、別の方向で発揮された第4戦でした。
前回も書きましたが、個人的には、この1戦がまさにターニング・ポイントでしたね。
正直な所、私も「団体戦と言っても形式上で、ここまでは前座」という気分が濃かったんです。
しかし、そこであの、棋譜を汚してまでの引き分けと、そして涙ですからねえ・・・・
「プロ棋士とコンピューターの対戦は、プロ側に損が多過ぎる」とは思っていたものの、
「ここまで大きなモノを背負わされていたとは・・・」と、見てるこちらも感情的になりました。
ただ逆に言えば、その涙こそが却って、第5戦を、そしてこの電王戦を、
「ただの座興」と言い切れない1戦に昇華させてしまったようにも思います。
> さて、メインは三浦八段vsGPS将棋。今までの四戦ははっきりいって前座であって、
> やはりA級棋士がコンピュータソフトとどれくらい戦えるかにこの電王戦の焦点がかかっていましたが、
> GPS将棋は圧倒的に強かったですね。
> 今の将棋のトッププロの間では、先手矢倉があまりに有利なので、
> 後手は矢倉を避けようとしますが、コンピュータソフトが後手矢倉で
> 完勝したのは衝撃的でした。
> しかもGPS将棋の手は完全な新手です。人間vs人間でも完全な新手をいきなりもってこられると
> 対応に苦慮するのに、コンピュータに新手を持ってこられて三浦八段は
> 完全にパニくったんじゃないでしょうか。
> コンピュータソフトが「新手」を考え出したというのは、プロ棋士の間でも衝撃的だったそうです。
新手か否かは、私には判断できる程の棋力が無いので、何とも言えないのですが、
GPS将棋と相対する三浦八段が、衝撃を受けていたであろう事は、
あの対局を見ていれば、空気感からも容易に想像が付きます・・・・
「圧倒された」という感じが、画面を通してすら伝わってくる1局だったので。
> さて、今の将棋界では、1日制(持ち時間4〜6時間)では羽生三冠、渡辺竜王
> 2日制(持ち時間8〜9時間)では森内名人、渡辺竜王
> が最強だと思いますが、1日制ではコンピュータソフトは既にトッププロを
> 超えているような気がします。
逆に1分将棋だと・・・もう誰が相手でも劣勢なんですかねえ?
1分しかないと、どうしても人間側のミスが増えるでしょうし。
一方で、時間を伸ばせば伸ばす程、人間は疲れる上に、悪い方へ思考が向く可能性がある一方、
コンピューターは疲れ知らずな上、計算が深まる程に正解率は高くなりますからねえ。
どれくらいの時間数が、人間にとって最も理想的なんでしょ?
神経戦を仕掛けても、コンピューターなんでビクともしませんし・・・・
って、個性の強かった昔の棋士とかだと、
わざとお茶をこぼしてコンピューターをショートさせようとしたり、
館内のブレーカーを落として停電させたりなど、そこまで形振り構わない手まで打ちそう(笑)。
> 先日の棋聖戦挑戦者決定戦では、渡辺竜王が30分以上かけて終盤の絶妙な寄せの手を考え出しましたが、
> それをGPS将棋はわずか数秒〜数分で見つけていたそうです。以下、渡辺竜王の自戦記のコメントを引用。
> (最後、▲8二飛車からの寄せの場面)
> 渡辺「30分くらいかけてようやく僕が見つけた勝ち筋を、GPSはすぐに見つけていたそうです
> 『渡辺さん、GPSと同じ手が指せるなんて、さすがですね』と言われました(笑)
> この寄せの筋はコンピュータには読めないと思っていたんですが、読むんですね
> 去年くらいまでは『GPSが渡辺と同じ手を指せる』と言われたんですが、
> 立場が逆になってしまいました(^^;」
> このコメントを見て、一日制では渡辺竜王でもコンピュータソフトに勝つのは難しいんじゃないかと思いました。
「コンピューター並みの事ができるなんて凄い!!」という開発者側の感想に、
私も、かなり共感を持てる立場なんですが、
でもやはり、これを言われると、
プロ棋士の側は「えっ!?」って感じになるでしょうね(笑)。
> ただし、渡辺竜王はコンピュータソフトにも造詣が深いので、
> いざ対戦となったら、ソフトの穴を事前研究で見つけることができるかもしれませんが。
渡辺竜王がボナンザと対局したのが2007年3月なので、もう丸6年も経つんですね。
あの当時は、「奨励会3段レベル」くらいとの評価が多かったので、
対局的にはそれなりに賑わせたものの、実力的にはまだって感じでしたが、
こうしてA級棋士が敗れる所まで来てしまうと・・・う〜ん、どうなるんですかねえ?
興味本位で言えば、予想が付かないからこそ見てみたいとは思いますけども(笑)。
ある意味では、勝敗が解らない今こそが、最も熱い時期だとも言えますし。
> また、ニ日制だと、人間側も限りなく最善手を出せるようになるので、
> 森内名人や渡辺竜王といったトッププロでも、コンピュータソフトとほぼ互角に近い
> 戦いができそうな気がしますね。
> ただし人間vsコンピュータソフトで2日制でやることは興行的にも無さそうですが。。。
そもそも2日制自体が、今後どうなって行くんですかねえ?
これでコンピューターが更に強くなると、対局の合間で添削とか出来ちゃいそうですし。
まあそれを言えば、休憩で一時的に対局場を離れた際に、
最善手をコンピューターに尋ねるとかも、出来なくはない状況になりつつありますが。
そして更に問題なのは、タイトル戦の1手1手を、ソフトの評価関数と見比べながら、
「その手は正解 その手は不正解」といった具合に観戦されてしまう点ですよねえ・・・・
こればかりは、どうやっても防ぎようが無い上に、プロの権威も有ったものじゃ無くなります。
「興行」として考えると、こちらの方がむしろ痛いかも?
> どちらにせよ、第三回をやるとしたらもう人間側は三浦八段以上の棋士として
> タイトルホルダー(今は森内名人、渡辺竜王、羽生三冠の3人)を出さざるを得ないですね。
> それを日本将棋連盟が認めるかどうかですが、最後は認めないような気がします。
> そして、それが日本将棋連盟にとっても正しいと思います。
> さすがにタイトルホルダーの3名が負けるということになると、
> それまで日本のプロ棋士が持っていた威厳とか、そういうものが全て崩れ去るかと思われますので。
> もうプロ棋士に一方的な「罰ゲーム」をさせるのはよしましょうというのが個人的な気持ちです。
連盟的には、「まだ勝てる内に、やっておこう」って気持ちで始めたと思いますが、
今回の結果により、そんな悠長な事を言ってる場合じゃない所まで、
一気に詰め寄られた感じでしょうからねえ・・・・
トップ棋士である現役のタイトル・ホルダーを出し、コンピューターを倒せれば、
注目度も段違いでしょうし、詰められた差を幾らか突き放せるのでしょうが、
そこで負けてしまうと、将棋界側は失うモノがあまりに大きく、
一方で追いかける立場のソフト開発側は、まさに挑戦者の立場なので、
勝てば得るモノが大きく、負けても失うモノはほとんど無いですからねえ。
実力がここまで迫って来た段階では、あまりフェアーな戦いとは言えないかも知れません。
まさにプロの側からすれば、「罰ゲーム」に等しい戦いを強いられる状況となるでしょう。
とは言え、「プロの世界」というのは、それを見てカネを払う客が居てこそのプロです。
コンピューターに負けた上で、新しいプロ将棋界がどうあるかを築いていくのか?
コンピューターとの戦いを避け、その上でプロ将棋界をどう維持するか?
プロの世界は「強さ」という幻想を売る商売だと考えると、
1度負けて、今までとは違う角度での「強さ」を売る方向へと模索するのと、
戦う事を避け続けながら、今まで通りの「強さ」を売りにするのとでは、
どちらも茨の道ではありますが、まだ前者の方が後者よりも道が開ける気もします・・・・
って、どちらも本当に生半可な道じゃないでしょうけど。
う〜ん、ところで、15年以上前に負けた「チェス」の世界は、今どうなんでしょうかね?
まあチェスは、世界的に普及している反面、基本的にアマチュアの世界なので、
プロの世界がある将棋や囲碁などとも、まあ違った感じなのかも知れませんが・・・・
とりあえず、コンピューターと10回戦って1敗しても、ニュースになるのは免れない以上、
1発勝負で悪い目が出たり、7番勝負で1度だけ負けても、騒がれるでしょうから、
プロ棋士だけでなく、アマや女流も参加する「オープン棋戦のトーナメント」に、
コンピューター枠でも設けるのが、最も適当な戦い方かも?とは個人的に考えます。
これなら、プロのトップ棋士も戦いを避けた事にはならず、
コンピューターが途中で敗退する確率も上がりますし、
トーナメント戦なので、世間の関心を長く集める事も出来ます。
ソフト開発側としても、実力者との直接対局の機会が増えるのは願ったり叶ったりでしょうし、
逆にソフトを連破する無名の棋士でも登場すれば、新たなスター誕生になるかも?
とは言え、これをやったら、将棋ソフトの実力アップが、更に速くなりそうですが・・・・
でもまあ、ぶっちゃけた話、このままコンピューターの性能が天井知らずに上昇し続ければ、
いつの日か、絶対にコンピューターが上回るのは、致し方の無い事ですからねえ。
将棋はオセロやチェスなどと同様に、「2人零和有限確定完全情報ゲーム」に属するので、
究極的に言えば、「先手必勝か? 後手必勝か? 引き分けか?」の答えが必ず求められ、
人間がそこまで辿り着く事は不可能でも、コンピューターには辿り着く可能性がある以上、
どこかで人間は必ず抜かれます(実際に6×6のオセロでは、16対20で後手必勝が解明されています)。
結局は、それを「トップ棋士の敗北」という明確な姿として表すか?否か?の話ですよね。
まあ、時間軸を大きく取り、神の如く大局的な視点に立って見れば、
「将棋は互いに最善手を打つと、123手で先手の勝利」みたいに解る日が、いつか来る事を思えば、
「プロ棋士がコンピューターに負けた」という話は、大した事では気にもなれます(笑)。
このままの速度でコンピューターが進歩すれば、2045年には全人類を超える提言する学者も居ますし、
幸か不幸か、そうした人類史上の過渡期を、私たちは生きている訳ですから。
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