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[23896] 戦況の変化と停戦の行方(その2)返信 削除
2022/4/5 (火) 23:59:10 徳翁導誉

> > 現時点でも、そこそこ地域はロシア軍の占領下に入ってしまっていますし、
> > どれだけウクライナ軍が善戦しているとは言え、ロシア軍を押し返すほどの力は無い以上、
> > 一時的にせよ、仮に停戦が為ったとしても、当然ながらロシア軍は占領地域から兵など引きませんよ。
> > そうなれば、停戦ラインは開戦前の東部2州を2分するラインから、現在の前線のラインとなってしまい、
> > こんなモノ、ウクライナ側が飲めるはずもありません・・・・
> > 逆にロシア軍の側からすれば、これだけ兵士の血を流して、今更東部2州の中間線には戻れません。

> ウクライナの中立国化(EU・NATOへの将来にわたる非加入)と東部2州の独立承認・クリミアの正式割譲とかで、
> 占領地域からの撤退と停戦はやはり難しいものですかねぇ。
> いや、東部2州もクリミアも簡単に渡せるものではないのは分かるので、
> ウクライナにもロシアにも高いハードルであるのは分かりますが。
> 特にこの内容で講和してしまえばゼレンスキー大統領の人気は落ちるだろうことは想定できますしね。

そもそも、ウクライナのNATO加盟に関して言えば、
10年掛けても実現性は乏しい話だったので、ロシア的にも大義名分くらいの意味合いしか無いはずで、
東部2州やクリミアに関しても、承認云々はさておき、既にロシアが実効支配をしていた訳ですから、
この条件では、実質「開戦前の状態に戻る」程度の意味でしか無いんですよね。
そうなると、ロシア側にせよ、ウクライナ側にせよ、既にこれだけの犠牲を出している以上、
この内容で妥結してしまえば、全ての死者が「無駄死に」という事になります・・・・
そうなっては、ゼレンスキーは勿論の事は、プーチンの方だって絶対に呑めないかと?
と言いますか、この条件だとゼレンスキーよりも、却ってプーチンの方が立場が危うい気がします。
まだウクライナは攻められた側ですけど、ロシアは攻め込んだ側なので。

まあ、双方が死力を出し尽くした上で、それでも決着が付かずに痛み分けとなる展開なら、
もう仕方無く、開戦前の状況に戻すという展開も考えられますが、
ここに至るには、戦闘が何年も続き、両軍共に更なる多大なる死者を出さない限り、
引き分け・・・というか、実質的に両者敗北の内容では、戦争が終わる事など無いと思います。

あと、EU加盟に関して言えば、そちらは別にロシアも大して気にしていないかと?
実際、これでもかとロシアの意向を気にするフィンランドにしても、
NATOには入っていませんが、EUには入ってますからねえ。
ロシアが求めているのは、あくまでも「軍事的中立化」であり、「経済的中立化」では無いはずです。
そして、ウクライナにおける対立構造って、「親ロシア vs. 親EU」と勘違いされがちですけど、
ウクライナ系住民だけでなく、ロシア系住民にしても、基本的には「親EU」であり、
その上で、「親ロシア vs. ウクライナ民族主義(反ロシア)」という形だと思うんです。
ですから、歴代の親露派と呼ばれた政権も、それと同時に親EU派でもありましたし、
それに関して、ロシア側が不快感を示したり、EUから引き剥がそうとした記憶は、少なくとも私にはありません。

う〜ん、これに似た感じの誤解があるのが、例えば、イラン国内の政治対立ですかねえ?
アメリカはイランを「悪の枢軸」扱いしてましたけど、
あそこまで民主化が進んでる国は、中東のイスラム諸国では ほとんどありませんし、
宗教的で強硬な「保守派」に対抗すべく、欧米諸国は「改革派」に期待を掛けてはいるものの、
その事が却って保守派を勢い付かせるという、負の共依存関係に陥っていると。
で、そして何より、欧米諸国が望んでいるのは「イランの非核化」ですが、
これに関して言うと、自由を求める穏健な改革派も、実は核開発には賛成している人たちが多いんですよね!!
イランの仮想敵国はイスラエルであり、彼らは既に核兵器を保有していますから。
この辺りの根本的な構図を理解していない・・・と言うか、選挙事情で親イスラエルと成らざるを得ない為、
アメリカはいつも、イランとの外交交渉が上手く行かないのだと思います。

> > ただ、現在の戦況を見ると、単に南部の守りが薄かった可能性もありますが、
> > 結果的には現時点で、クリミア周辺の沿岸部の占領が最も進んでますし、
> > ロシア軍の側も、東部2州の完全掌握より、クリミアとの地続き化を優先しているのが解り、
> > それだけクリミア(セヴァストポリ)を最重視している様子が伝わります。

> マウリポリはほぼ陥落のようですね。
> 南部の方が順調に攻略されているということは、
> ウクライナ軍はキエフを固めているということでしょうか。

と言うよりも、さすがにウクライナ側も、ここまでの全面侵攻は想定外だったのでは?
もちろん、ただ単純に、首都キエフはウクライナで最も大きな都市であり、
東部のハリコフも2番目に大きな都市なので、それだけ守りも固められていた面もあるでしょうし、
その他にも、やはり最も危険性が高かったターゲットは、東部2州(ハリコフ含めて3州?)であり、
政治的に狙われかねないのも、首都であるキエフでしたから、その2箇所は事前に固められていたはず。

そういう意味では、ドニエプル東岸よりキエフを攻める為、
あっさりと落とされた、北部のチェルニヒウ州なんかも、
ロシア軍が長駆してやって来るなど、恐らくウクライナ側としては想定外のルートだったはずで、
同じく、クリミアから、ここまでの大攻勢があるとは予想していなかったからこそ、
南部のヘルソン州とかも、早々に落とされたのだと思いますよ。
首都キエフの守りを固める為に、わざわざ北部や南部の国境沿いから兵を引き抜いたのだとしたら、
却ってロシア軍の侵攻スピードを速めて、本末転倒も良い所でしょうし、地方住民の危険性も増しますからね。
敵軍を自国深くまで招き入れ、補給線が伸びきった所で大打撃を与える、防御戦術の一環だとも思えませんので。

> > ただ、結果的にであれ、意図的にであれ、南部の戦闘が激戦化していて、
> > クリミアとの地続き化や、沿岸部の完全奪取が、優先して進められる展開であると、
> > これはもうロシア側にしても、中長期戦は覚悟したって戦略方針だと思うんですよね。

> やはりクリミアを地続きにするのを優先したのではと。
> まぁ、停戦交渉でウクライナはそこら辺まで放棄できるかと言われれば疑問ですが。

はい、それはさすがに無理だと私も思いますよ。
クリミアや東部2州ですら困難なのですから、今回の戦争による支配地域など尚更。
とは言え、ゼレンスキーも意外と したたかだな、と思わされたのは、
国民投票というキーワードに続き、今度は「15年後」というフレーズが出てきた事!!
いや〜、モノは言い様ですよね、本当に(笑)。

現段階では、クリミアの帰属問題を、15年掛けて話し合うという、ウクライナ側からの提案ですが、
この対象が東部2州、更には今戦争の占領地帯にまで拡張された場合、
これならプーチンも充分に満足できて、停戦合意に至れる内容になるんです。
取り敢えずであれ、何であれ、今の支配地域を確保できた上で、駐留の負担が減らせるのであれば、
プーチンとしても、充分な成果が得られたとして、停戦して兵を引く事が出来ますし、
ウクライナ側も、15年後には全て戻ってくるという建前で誤魔化せられれば、
戦争を終えたい本音の部分から、屈辱的な降伏に近い停戦も、受け入れられるかも知れないんですよね。
そして何より、15年後なんて言ったら、プーチンもゼレンスキーも責任者の立場に居ないと!!
(プーチンの任期は最長でも残り14年、ゼレンスキーの任期は最長でも残り7年なので)
これって、重大な決定を行う上で、当事者の責任や保身を考慮に入れれば、非常に重要な要素です(笑)。
面倒事の解決を先送りし、しかも問題の固定化まで内包するとあっては、必ずしも国益に適うとは限りませんが、
戦争を終える為には、双方が合意を結ぶ以外に方法は無いので、現実的に保身や責任回避はとても重要だと。

そういう意味では、感情的に行くと、戦争が終わってもロシアへの制裁は即解除とはならないでしょうし、
ウクライナに対する賠償請求だってしたい所でしょうけど、しかし停戦を最優先するのであれば、
停戦されれば制裁も即解除するし、賠償も請求しない(国際社会で復興を担う)とした方が、
プーチンだって、妥協しやすくなるという面はあるんですよね。
逆に言うと、停戦しても苦しい状況が続くのであれば、
ロシアはこの戦争でより大きな利益を得るまで、止まれなくなってしまうので。

もちろん、これは心理的に大変な苦痛を伴う決断でしょう・・・・
「ブチャの虐殺」みたいな事が報じられると、その想いは尚更です。
しかし、パレスチナ紛争におけるオスロ合意の時も、そうでしたけど、
和平合意とは、味方を殺した血塗られた悪魔と握手する事でしたからねえ。
(とは言え、戦争である以上、自分たちも同じく悪魔である自覚には乏しいものですが)
ただ、国際司法の場でプーチンが戦争犯罪人として判断されると、
プーチンは国際政治の舞台に戻れなくなるので、握手は更に難しくなりますね。
出国したり、下野した瞬間、旧ユーゴのミロシェビッチのように獄中死となるのは嫌でしょうから。
そう考えると、仮に戦闘行為は小康状態になっても、国際緊張の方は長引きそう・・・・
プーチン政権が続く限り、ロシアも欧米主導の国際社会には戻れないとなると、
中国・インド・中東諸国といった、上海協力機構な面々との関係性を深めて行くでしょうし、
う〜ん、こうして対立が深まると、ますますコロナ以前の世界は遠くなっていきますね(泣)。

> ロシアへの経済制裁の影響は詳しくは分かりませんが、
> 秋まで持つんですかねぇ…
> メディアの情報を真実のなら経済制裁はそれなりのダメージがありそうに思えますが…

もしかしたら、短期的なダメージは、日本も相当に大きいかも?
ロシアは世界2位の産油国であり、小麦の生産量はウクライナと合わせて世界の3割ですからねえ。
トランプ政権時の石油増産政策により、世界1位の産油国となったアメリカも、
今はバイデン政権なので、自然に負荷の掛かる増産は、民主党の支持層的にもハードルが高く、
だからと言って、世界3位のサウジアラビアに増産を依頼するにしても、
イエメン内戦で人道危機を起こしているサウジに対して、バイデン政権は冷たい対応を取ってきたので、
最後は了承するかも知れませんけど、紆余曲折はあるはずで、上手く進むとは限りません。
また何より小麦の方は、今年のウクライナでの作付けは相当大変そうですし、
仮に収穫できても輸出も儘ならないでしょうから、食糧価格は燃料価格以上にヤバそう?

逆に言うと、ロシアは経済制裁で輸出入を止められていても、
エネルギーと食糧は自給できるので、豊かな生活は難しくても、死にはしませんけど、
エネルギーと食糧を輸入に頼る国は、日本を含めて、本当に大変になると思いますよ・・・・
まあ、さすがに飢え死にしたりは無いでしょうけど、物価は相当上がるでしょうし、
コロナ禍以降は「有事の円買い」神話も崩れ、円高まで襲いかかるとなれば、かなり苦しくなります。
(無理矢理ポジティブに捉えれば、国産米の消費拡大や、再生エネルギー拡大の機会にも?・苦笑)

ハッキリ言って、ロシアはロシアで滅茶苦茶 大変だとは思いますけど、
その姿を見て「自業自得だ!」と思える余裕は、恐らく日本も無くなりそうですし、
そして、ロシア依存度が日本よりも遥かに高いEU諸国は、本当に苦しくなると思いますよ。
それこそ、ロシアが天然ガスの輸送を冬にストップされれば、こちらはリアルに凍死者が出そう。

> > ただ言えるのは、目前に迫ってるであろうマリウポリ陥落の後、
> > クリミアとのランド・ブリッジ(陸上輸送路)を確保したロシア軍の部隊が、
> > 続いて どちらに向かうかで、プーチンの考え方が見えそうだという事。
> > それがキエフ方面に進むなら、未だ数ヶ月以内の短期決着に固執しているって事でしょうし、
> > それがオデッサ方面に進むなら、中長期戦も覚悟してジックリと腰を据える感じでしょうし、
> > それがハリコフ方面に進むなら、とにかく占領地を確保した上での停戦を望んでるのでしょうし、
> > 相も変わらずに3正面作戦を続行するなら、ウクライナ側にも一筋の光明が見えてくるかも?

> オデッサ方面に向かう可能性もあるのですかね…
> 正直今からウクライナ全土の占領を目指すのは更なるコストがかかりますし、
> ロシアもある程度のところで停戦に動くのではと思っているのですが…
> 希望的観測なんでしょうかね。

この文章を書いた頃とは、既に戦況が変化してますし、
それに関しては、コチラで別途返信↓も行っている為、詳しい話はそちらに譲るとして、
http://tokuou.s500.xrea.com/cgi/kjbn/kjbn.cgi?tree=c23885
オデッサ方面への侵攻に関して言うと、これは必ずしもウクライナ全土の占領を目指す訳ではありません。
簡単に言うと、2014年に示されたノヴォロシア連邦案においても、
キエフなど北部は含まれていなかったものの、オデッサなど南部は含まれていました。
なので、西部や北部には手を出さずとも、南部は押さえに行く可能性は充分にあったと。

その理由としては、まず第1に、オデッサを始めとした南部は、ロシア系住民の割合が高いからであり、
実際、2014年の革命後には、ハリコフを含んだ東部3州だけでなく、オデッサでも衝突が起きてました。
そして第2に、南部は黒海に面した沿岸部であり、海軍力で圧倒的に勝るロシア軍の方が有利な上、
沿岸部を完全に掌握してしまえば、残されたウクライナ領は完全に海上輸送路を絶たれてしまう事。
輸入も輸出も陸路のみとなっては、仮に一時停戦が成っても、経済や市民生活は儘なりません。
続いて第3に、オデッサ周辺までロシア軍が支配下に収められれば、
ウクライナの隣国モルドバで、親ロシア派が支配する沿ドニエストル地域とも、地続きで結ばれます。
以上3つの理由からも、オデッサ方面を押さえる事で得られる実益が、ロシア側にも大きいって事ですね。

では現実的に、ロシア軍がオデッサ方面へ進む確率が どれくらいあるかとなると、
現状では・・・ほぼ無くなったと考えて良いかと?
オデッサを落とすというのは、東部から南部に至るノヴォロシアの範囲を押さえると共に、
海上輸送路を絶って首都キエフの陥落に繋げるという、両面作戦を続けるなら最適解だとは思われます。
ですが既にロシア軍は、その二兎を追う余力に欠いていて、既に東部方面への戦力集中に転換し始めており、
その両面を睨んだ1手というのは、あまり意味のある作戦では無くなってしまいました。
なので、もしも現段階でオデッサを狙う事となれば、それは恐らく東部2州とクリミア回廊を確実に押さえ、
更にはハリコフ州を陥落させた上でないと、なかなかそちらまで手が回らないと思いますし、
仮にドニエプル西岸まで手を伸ばしても、今度は防衛が負担となり、今のロシア軍にそれだけの余力は無さそう。
そして何より、先日、ロシア側は大型揚陸艦を撃沈されてしまいましたから、
物理的に海上輸送が大変となっただけでなく、海上での絶対優位という自信も傷付けられたかと。

こうなっては、まずは「東部2州&クリミア回廊」の確保がマストであり、
次に、可能であればハリコフ陥落に注力して、オデッサ転戦があるとすれば その後かな?
とは言え、もしもロシア軍が再攻勢を仕掛けるとすれば、むしろオデッサよりも、
政治決着を目指す上でも、陥落までは無理かも知れませんが、
プレッシャーを掛ける意味でも、首都キエフを狙う可能性の方が高そうな気がします。
そちらの方が、支配下に置く南東部へのウクライナ軍の注力を、逸らす効果も期待できますし、
それに何より、これだけ輸送に苦難していると、いくら海上輸送があるとは言え、
戦線が伸びきるのは、とても良い方法とは思えませんからね。
とは言え、先日発表されたロシア軍の今年の徴兵計画を見る限り、大規模な再攻勢の可能性は低そう。
人数的には例年とあまり大差なく、しかも任期満了の徴集兵を本当に帰還させるとなれば、
いきなり予備役を再招集して奇襲とか現実的には無理ですし、兵隊の頭数で作戦の幅は決まってきますので。

> > そういう意味では、ここらで一旦 戦線が膠着するであろう事は、個人的にも想定内でしたが、
> > しかし一方で、1ヶ月経ってもハリコフが落ちないというのは、正直予想外でした。
> > 首都キエフと違い、ハリコフはロシア国境から、わずか40kmの距離にありますし、
> > 8年前にロシア側が仕掛けた、ウクライナ東部の独立工作においても、
> > ハリコフは、ドネツクやルガンスクと同じく、ターゲットとなりましたからねえ。

> ハリコフもかなり砲撃はされているようですが、
> 陥落間近みたいな報道もないですよね…

ハリコフは人口150万を誇る、ウクライナ第2の大都市ですからねえ。
同じく市街戦に突入しているマリウポリが、人口50万の都市との事なので、
マリウポリでもあれだけ苦戦しているなら、ハリコフは尚更かと?
港湾都市であるマリウポリと違って、ハリコフは内陸部にあり、海上輸送に頼れませんし、
それに何より、そもそもハリコフって、帝政ロシア時代に、
黒海を目指す南部侵攻の軍事要塞として、築かれたのが都市の始まりですから、
軍事力で落とそうとした場合、何かと大変そうな土地だろうとは思うんです。
まあ逆に言えば、それだけの戦略的要衝だからこそ、独ソ戦では何度も激戦地となったのでしょうけど。

> というか流石にロシア軍の進軍速度が遅すぎる気がしますが…
> ここ2週間ほど停滞しているように思えますし。
> 余り信じていなかったのですが被害が甚大という報道が案外真実なのでしょうか。

ウクライナ側が発表する数字は、さすがに盛っていると思いますけど、
NATO側が発表している死者数7000〜1万5000人という数字は、そこまで大外れはしてない気がします。
既にロシア軍の将官が7名も戦死している時点で、とてもマトモな戦況じゃないはずですし、
1万人くらいの大損害を受けていても、そこまで意外じゃない気はしますね。

どちらかと言うと、個人的にもっと気になったのは、被害は甚大とは言え、
ロシア国内からの輸送や兵員補充が、まるで機能していないかのように見える所ですね。
こちらは国内ですから、別にウクライナ側から攻撃を受けている訳でも無いですし、
伝統的に、ロシアの交通インフラや輸送力は貧弱とは言え、それでも限度があるでしょうし、
事前に用意した兵員と物資で事が済むと過信し、準備不足だった面があるかも知れませんけど、
国内の兵員や物資まで消え失せた訳では無いのですから、本当に不自然というか、
もしかしたら、国内に残留している兵士たちまで、士気が極端に落ちていて、
サボタージュ気味になっている可能性は、もしかしたら有り得るのかも知れませんね?
下手にキビキビ動いたら、今度は自分たちまで戦場に送られて、屍になる恐れがあるので・・・・

でも、もし本当にそうだとしたら、立て直した上での再攻勢など夢のまた夢でしょうし、
現在の支配地域だけでも維持しようとしても、充分な補充がなければ、
既にウクライナにいるロシア兵が消耗していく一途で、そのうち維持すら困難になるはずで、
それでも無理に追加派兵をしようとした場合、その部隊が反旗を翻すなんてケースも歴史的に多いです。

> > こうなってくると、仮に戦争が長引いて、ロシア軍の消耗も増していった場合、
> > プーチン政権を倒すのは、民衆によるデモよりも、軍部によるクーデターの可能性の方が高いかも?
> > ただ、その場合の危険性を考えると、軍事クーデターのシナリオは見たくないなぁ・・・・
> > 正直、プーチン政権よりマシになる保証なんて、全く無いですからねえ。

> ロシアの軍事クーデターはあまり見たくないですね。
> おっしゃる通り良い方向に進む絵が見えませんし。
> それなら民衆のクーデターの方がまだマシな気がします。
> とはいえ民衆によるクーデターの可能性は低いと私は思っていますが。

それこそ私は、1991年に起こり、そして失敗に終わった「ソ連8月クーデター」を覚えているので、
もしも軍事クーデターで、プーチン政権が倒れたとしても、良い方向に進むとは思えませんし、
その一方で、あの時は軍強硬派の暴挙を、広場に集まった10万人の市民が抑え込み、
一気にソ連解体まで持っていってしまったので、市民の力も侮れないとは見ているんですよね。
って、その辺りの話は、まだ当時は子供だった私などよりも、
実際に現地に居られたミカエルさんの方が、断然お詳しい↓でしょうけど(笑)。
http://tokuou.s500.xrea.com/cgi/kjbn/kjbn.cgi?tree=s18731#18731

> > アメリカ議会でのオンライン演説が行われた直後、
> > 「大変な時なのは分かるが、ウクライナ大統領はスーツを持っていないのか?」という、
> > アメリカ人の経済評論家のTwitter投稿が、世界的に炎上するという事が起こりましたけど、

> 正直このニュース見たときこんなことで炎上するのかと思いましたね。
> 言っていることは正論だと思うのですが…
> ゼレンスキー氏を批判すること=反ウクライナみたいになってしまっているのはちょっと違う気がします。

いや、あの発言内容だと、確実に炎上はしますよ。
社会にネットが普及して以降、人々の分断化が進んでいると言いますか、
より厳密に言うと、以前はもっとマダラだった世論の意見分布が、
幾つかの意見に吸着というか集約されて行き、その中でも大きな核となるのは極端な主張ですから、
それこそ「勧善懲悪劇」と私は呼んでますけど、安易に「敵と味方」に分けたがる風潮は強まってる気がします。
で、そういう人たちから見れば、自分にとって都合の悪い見解は、全て「悪」に映るであろうと。
そして、そういった層が一定数いるのは仕方無いにしても、
社会の主導権(世論の大勢)まで握られると、さすがに厄介だな・・・って所ですかねえ。

そういう意味では、早くもドイツの諸州で、ナチスのハーケンクロイツと同様、
今回の戦争でロシア軍が使用する「Z」マークを、公共の場で表示する事を禁止し、
違反者に対しては、禁固刑すら辞さない方針なのは、ちょっと行き過ぎな感じもするかな?
仏教を象徴する「卍」マークまで、現実的には排斥されていたりするのも、
解らなくは無い反面、あれはあれで宗教差別なはずですけど、その辺りは大して気にも止めないと。

ちなみに先週、関東では桜も満開という事で、公園には多くの人であったのですが、
その中で、胸にデカデカと「Z」のマークが入ったTシャツを着て、
走り回ってる小学生の兄弟を見て、時が時だけに、我ながら一瞬ギクッとしたんですよね!!
で、よ〜く見てみると、胸一杯のZマークの後ろには、ウルトラマンの姿が描かれていて、
それが、少し前までテレビ放送されていた「ウルトラマンZ」のキャラTシャツだと解りました(笑)。
あの子供たちも、今だとドイツに行ったら、逮捕されたりするのかなぁ?
と、それはさすがに極端にしても、もしも大人が集団で着たら、やはり別のメッセージ性が出てきそう。

って、そんな話をしていたら突然 思い出したのですが、昔、伊集院光がTBSの深夜ラジオ番組で、
番組ディレクターが、当時TBSで放送されていた「ウルトラマンコスモス」のTシャツを、
仕事中に局内で着ていて、上の偉い人から お叱りを受けるという事件がありましたね(笑)。
それは何故かというと、オリジナルのジョークTシャツ100枚を全国の希望者に配り、
夏休み中に何枚のTシャツを見つけられるかを競い合う、リスナー参加型の大型企画を行われた際、
番組ディレクターの着ていた(着させられた)ジョークTシャツが、
「ウルトラ マンコ スモス」と3行に分け、真ん中の行だけフォントを太文字にしたモノだったと。

> > 日本の首相とかも、大きな自然災害とかあった際には、
> > 作業着を着て、ヘルメットを被るような事をしてますが、結局は滑稽に見えるのが常です(笑)。
> > しかしゼレンスキーの場合、そこは本業が「役者」として、見せ方を熟知しているので、
> > 滑稽に見えるどころか、本当に勇ましく見せるのが上手いと思います。

> 地震の速報でもニュースキャスターがヘルメット被って原稿読んでますからねぇ…
> これ見よがしだなぁと正直思ってしまいます。

まあテレビ局の場合は、テレビ画面には映らない頭上に、
大きな照明が いくつも吊らされているので、ヘルメットを被る事は理解できる反面、
いざ実際に照明が落下したら、多分ヘルメットじゃ意味無いだろうな?という思いも(笑)。

> まぁ、外に出ての台風中継なんかは本当に危ないと思いますが。
> あれもやる意味あるのかなぁと思っちゃいますよね。

いや、あれはあれで結構効果があると思いますよ!!(笑)
まあ単純に、ああした中継を行うと、視聴率が稼げるというのが大きいでしょうけど、
それって要するに、「凄い凄いって、実際どれくらい凄いの?」という関心が、
多くの視聴者の本音として、やはりあるからだと思うんですよね。
ですから、もしもテレビ局が中継を行わなければ、
「自分の目で確認しよう」と、実際に外へ出てしまう人が、今の数倍に膨らむはずで、
そうなれば、被害は更に増してしまいますし、消防だって無駄な仕事が増えてしまいます。
そういう意味では、あのように「ショー」として見せる事で、軽率な行動をかなり抑えてる面があると。

って、そうは言っても、外に出て確認したがる人は、絶対に一定数は居ますし、
実の所、私自身も思いっ切り、そういったタイプなんですよね(苦笑)。
さすがに、身に危険が及ぶ行為や、誰かに迷惑が掛かりそうな所まではやりませんけど、
でも実際、自分の目で確かめたいという衝動が、なかなか抑えられない人間なので・・・・

> > ただ、ここへ来てゼレンスキーが、停戦交渉における「国民投票」という単語を出してきた事で、
> > 全く自覚のないまま、国民を危険に晒している訳では無さそうな事が解ったと同時に、
> > 当然ながら、自ら甘んじて汚名を被る覚悟で、和平を導く気も無い事が解りました。

> まぁ、上でも書いた通り下手なところでの妥協は後世の歴史学者に評価されることはあっても、
> 現時点では支持率の低下を招くでしょうしねぇ。
> もしかするとゼレンスキーとプーチンは人の命を使ったチキンレースをしているのかもしれませんね。
> どのくらいまで自分陣営の死者に耐えられるか先に降りた方が政権を失うというような。

まあでも実際は、銀英伝の世界観とは違って、「後世の歴史家の評価」なんてモノを、
そこまで気にする為政者など ほぼ皆無でしょうけど、それはさておき、
戦争って、始まる際には、誰かの明確な意図もなく、何となく始まってしまう場合が多々ありますが、
終わる際には、誰かが明確な意図を持って動かないと、絶対に終わりませんからねえ!!
で、全体の国益を考えれば、早期に終戦した方が望ましい事は、誰の目にも明らかであっても、
個人の保身で考えると、自らが その決断を行う事で、大きな損害を被るのも明確だとなると、
やはり誰も泥を被りたがらず、ズルズルと戦争が長引くなんて事は、非常に多いですし、
また、交渉すべき相手まで潰してしまえば、勝っている側が終わらせたくても、なかなか終わらない・・・・
そういう意味では、使い古された言葉ですけど、「戦争は始めるよりも、終わらせる方が格段に難しい」と。

そして、単純に「戦争を終わらせる」と言っても、その終わらせ方には何パターンかあって、
勝っている側からすれば、目的の成果を完全に得ての勝利か? 部分的な成果で妥協する勝利か?
負けている側からすれば、相手の要求を全て呑む完全な敗北か? こちらの主張も通す有条件下での敗北か?
そして、どちらの勝敗内容を選ぶかに関しては、「成果と損害」のバランスによって決まる事となります。
要するに、成果を得る事を最重視して損害は顧みないか?
許容範囲内の損害で最大限の成果を目指すか?
はたまた、その両方の どこか中間地点か?
「戦争とは外交の一手段」だと考えれば、戦闘に勝つだけでは不十分であって、
その戦闘の結果、いかなる成果を確定させるかが、戦争の最終目標だとも言えます。

また、そういう意味では、今回のウクライナ戦争で考えた場合、
まずは、ロシア側のプーチンの立場で考えると、完全勝利とはウクライナの親ロシア化であり、
その為の作戦として、電撃的に首都キエフを陥落させ、傀儡政権を樹立する事にあったのでしょうが、
このシナリオ自体は既に崩れており、今後挽回する可能性も、現状ではかなり低いと思われます。
そうなると、次なる「妥協的な成果」としては、最低限は東部2州の完全掌握、続いてハリコフ州の占領、
更にはクリミア地続き化、そしてノヴォロシア範囲の制圧という優先順位になってくるかと思われますけど、
現在の戦況を受け、ハリコフ占領とクリミア地続き化の順番が逆転した感じですかね?
(以前、ドンバス地方を「ズデーテン」に例えましたが、クリミア地続き化は「ポーランド回廊」に当たるかな)
あとは、我慢できる損害の範囲内で、どれだけ支配下地域を確保できるか・・・というバランスの問題かと。
それこそ、これだけの損害を出しながら、東部2州しか押さえられなかったとなれば、
どれほど勝利を喧伝しても、実際には敗北で、プーチンは権力から転落する可能性が高くなる気がします。

一方、ウクライナ側のゼレンスキーの立場で考えると、
完全勝利はウクライナ全土からのロシア軍撤退でしょうけど、正直それは実現困難でしょうし、
妥協的勝利として、開戦前の状態まで戻すというのも、まず無理な話なので、
本音を言えば、何が何でも開戦を避けるというのが、恐らくベストな選択だったと思いますけど、
既に戦争が始まった以上、あとは負けるにしても、どれだけ有利な条件を呑ませられるかの戦いですよね。
で、その為にはどうするべきか?というと、可能な限りロシア軍の損害を増やす事が一番なのですが、
徹底抗戦をするほど、民間人も含めた損害は非常に膨れ上がっていきますから、
そうした損害を恐れずロシア軍を叩くか? 可能な限り損害は抑えるか? バランスの良い中間地点を模索するか?
現状だと、ゼレンスキー的には3番目の方針で物事を進めているかとは思われますが、
もしもロシア側が非情な作戦行動に移った場合、3番目の選択肢は難しくなるので、
1番か2番かとなると、これまでの流れから1番目の方を選びそう・・・・
実際、第2次大戦におけるフィンランドは、ソ連軍の侵攻に対して徹底抗戦を選びましたが、
兵士10万人(全人口の3%)が戦死し、国土の1割を割譲して、
戦後は属国的な宥和政策に徹しながらも、それでも何とか、国家の独立は維持しましたからねえ。

そういう意味では、「人の命を使ったチキンレース」というのは、まさしくその通りだと思いますよ!!
ただ、ここまでの損害状況を受けて、先にプーチンの方が完全勝利から妥協的勝利に移った感じがしますし、
それによってゼレンスキーの方も、民間人を犠牲にしてでもロシア兵を殺す作戦の決断は避けられたかも?
こうした戦い方となると、戦争から紛争へと徐々に移行していき、早期の決着は難しくなる反面、
戦争の危機レベルとしては落ちて、核使用の可能性もグッと下がった気はします。
そうなれば戦いは長期化していき、死者数は今後もジワジワ増え続けていくでしょうけど、
それでも、山中ではなく街中に潜み、草陰ではなく人影に紛れて戦う市街戦は、
戦場の凄惨さを今以上に数段悪化させますから、悲しいですけど、そこと比べればマシとも言えます。
とは言え、今後は戦場が限定化される方向へと、確実に進んでいくとは限らず、
プーチンさえ決死の決断を下せば、もう1度くらいは、再攻勢に打って出られる国力がロシア側にあると思うので、
逆に言うとゼレンスキーとしては、そうした決断を下させない方向に、事態を持っていく必要があるかも?

ちなみに、こうしたテーマを扱う本が、ちょうど昨年出版されており、
著者は、最近だと時々ニュース解説でも見掛ける、防衛省の主任研究官の方ですね。
扱われている題材が、ここ100年の大きな戦争に限定されている上、
どうしても、政治的視点よりも、軍事的視点が強い印象を受けましたが、
内容は悪くなかったですし、もしも興味がありましたら、読んでみて損はない1冊かと思われます。

「戦争はいかに終結したか」
https://www.amazon.co.jp/dp/4121026527/

> > そして、冷酷な言い方をすると、安全な後方のロシア側に避難させるよりも、
> > 戦地であるウクライナ国内に留まらせて、凄惨な思いを数多く負わせる方が、
> > 市民感情がそちらに早く流れますし、ロシア側の負担も少なくて済みます。
> > そういう意味では、プロパガンダ目的で避難民を使うとかは、あまり無さそうかな?
> > どちらかと言えば、占領統治における現地協力員を育てるという方が、可能性的にはあるかも?

> 自国民が敵対者じゃないかという猜疑心に襲われ始めたら厳しいですよね。

南北ベトナムが統一された際も、昨年のアフガンにおけるタリバン政権復活の際も、
やはり、旧体制下で協力的だったと見なされた人々は、迫害の危険と背中合わせでしたし、
そもそもドンバス紛争の時点で、親ロシア派の統治地域だけでなく、ウクライナ側でも、
スパイだ何だと疑念を持たれると、今までの生活を送れなくなるケースが、普通にあった訳ですからねえ。
しかも今回の戦争でも、ウクライナ政府側は、ロシア支配地域下での住民投票に対して、
参加した市民は裏切り者として糾弾する姿勢を示していますので、危険性はあるかも知れません。
とは言え、この状況から、ウクライナ側が巻き返して、ロシア軍の撤退まで成った場合には、
長いモノに巻かれるじゃないですけど、そこそこ不満はあっても、表面的には穏便に済みそうな気はします。
実際、8年前の革命時に、暫定政権がウクライナ民族主義的な政策を採っても、
大多数のロシア系住民は、そこまで表立った反発をした訳でも無かったですからね。

> そうならないうちに停戦となってほしいところです。
> ただ、落としどころは正直まだ見えていないですよね…

上や他でも書きましたが、今の展開だと、最も長期化するパターンに入ってますね。
簡単に言ってしまえば、「ウクライナの朝鮮半島化」といった所でしょうか?
朝鮮戦争の際もそうでしたが、両軍の支配下地域を基準に引かれた停戦ラインが、
実質的に、そのまま国境線となるような感じで、
そうなると、実際に停戦内容には合意できても、少しでも支配地域を広げようとして、
なかなか妥結のタイミングが計れないなんて事は、普通に起こり得るかと思われます。
特にウクライナの場合は、朝鮮半島よりも、両軍が睨み合う境界線が長くなりますし、
ただでさえ長期化しそうな所に、更なる長期化要素が加わってる感じですよね。

そして、ここ数日の動きを見ていて、それ以上に厄介な状況になりそうなのは、
今まで、ロシアへの編入を求めていたのは、ルガンスクのみだったのが、
ここへ来て、ドネツクだけでなく、グルジア内の南オセチアでも同様の動きが出てきてるんですよね。
グルジア内のアブハジアや、モルドバ内の沿ドニエストルでも、じきに同様の動きが出てくるかも?
こうなると、ロシア周辺にある国際的には未承認な国家が、緩衝地帯として温存されるのではなく、
今までの方針から大転換して、ロシア連邦の構成国として飲み込まれる方向に、進みそうな感じも出てきました。
言うなれば、子会社として存続させるのではなく、本社に吸収合併しちゃう感じでしょうか。
となれば、ウクライナに東西2つの国家が出来るのではなく、
クリミアと同様、ロシア支配下のウクライナ各州が、独立宣言の後にロシア併合という流れが、
現実味を帯びてきたと思いますし、仮にそうなれば、停戦や和平など更に後退します・・・・
朝鮮半島に例えれば、北朝鮮が中国の一部になるような話であり、
そうなってしまうと、南北統一の困難さは、今よりも遥かに上がりますからねえ。
ロシア本国との一体化が進んでしまえば、仮にプーチン政権が倒れても、なかなか再分離とは行きませんし。

「15年後に決着」という提案もそうですけど、とりあえず、目先の停戦は行えたとしても、
その反面で結論の先送りって、問題の固定化や、解決の困難化とも、表裏一体ではあるんですよ。
早期停戦のシナリオとしては、流石にロシアも負担的に苦しくなってると思うので、
ある程度、東部地域やクリミア回廊を確保できれば、5月の対独勝利記念日を目安に、
この戦争における「作戦成功」を表明して、ひとまずの決着としたい意向がプーチン側から示された場合、
それにゼレンスキー側も乗ってくれば、「全面戦争」の終結は図れるかも知れません。
しかし、それは「地域紛争」へと移行されるだけなので、規模は縮小されても戦闘は続くでしょうし、
開戦前は東部2州に限定されていた前線が、停戦後には数倍に伸びる(戦闘も増える)事を意味します。
そして、両国間で停戦合意を結び、戦争から紛争へと移行させた後で、
ロシア側が独立宣言した諸州を編入し、ウクライナ側も「騙された!」感じを装えば、
両国間の溝は更に深刻とはなるものの、両指導者はメンツを保て、市民も日常生活を取り戻せそうな気はします。

ちなみに、こうした「時の政権」には都合の良い妥結も、長い目で見れば「国益」を損なう例としては、
日本で身近な所だと、安倍政権とパク・クネ政権の間で結ばれた、
慰安婦問題に関する日韓合意が、まさにそんな感じだったかな?
もしかしたら、当事者間だと本気で、「これで完全決着」と甘く考えてたかも知れませんが、
あの内容では、パク・クネ政権の間は、日韓関係のゴタゴタが沈静化できるにしても、
韓国側の左派的には納得できる内容ではなく、そこまで見通した対策を日本側も取らなかった為、
そのうち韓国で政権交代が起これば、ひっくり返される可能性が高く思えたので、
日韓関係の改善という中長期的な視点から見ると、「却ってマイナスだよな」と当時から見てました。
せめて、岸田外務大臣ではなく、安部総理本人が渡韓して大統領と握手し、
記者会見における岸田発言と同内容の話をしていれば、まだ韓国の中間派を取り込めたのに・・・・
正直、「最終的かつ不可逆的に」の一文なんて、時限爆弾ワードにしか思えませんでしたからね(苦笑)。

まあ、強いて安倍政権側を擁護する点があるとすれば、
まさかパク・クネ政権が任期途中で崩壊するとは、誰にも予想できなかった所かな?
あんな形の終焉でなければ、仮に左派への政権交代が起こったとしても、
これが再問題化がされるのは、恐らく政権も任期の後半に入ってからだったでしょうし、
早くても5年くらい先の話だと考えれば、安倍政権的にも別に構わなかった可能性はあります。
それどころか、自らが下りた後に再問題化した方が、面倒も避けられる上に、影響力が残せますからねえ。
果たして、そこまで考えての意図的合意だったのか?
はたまた、本当にあれで最終決着できると見ていたのか?
ただ言えるのは、私は別に利害関係者では無いので、こうして客観的に観察出来てましたけど、
当事者であるほど感情も絡みますし、自らの利害関係もありますから、
当人的には「正しい決断」だと信じていても、そもそも最初からメガネが曇っていた可能性は充分ありそう。

まあそれは、今回の戦争におけるプーチンやゼレンスキー、そしてバイデンに関しても同じ事が言えるかも?
背負ってる重責が大きいほど、無意識に希望的観測へと誘惑されるのは、やはり人間の心情ですので・・・・
しかし、大きな重責を背負えばこそ、冷静な判断力と決断力が求められ、
その為には知性が不可欠だろうと思うのですが、今の時代の流れは、世界的にも「反知性主義」なんですよね。
今後、ウクライナ戦争が一段落着いたとしても、この世界的な風潮が変わらない限り、
程度の差こそあれ、同じ様な諍いや衝突は、これからの断続的に発生していくような気がします。
それは自由民主的な国家であっても、ネット普及の副作用で、自分たちが見たいモノしか見なくなれば、尚更。


P.S.
キエフを「キーウ」、ハリコフを「ハルキウ」という感じで、日本政府がウクライナ語読みに変更して以降、
新聞・テレビの各紙各局も、一斉に呼び方を変更しましたね。
まあ、こうした変更が起こる事は開戦当初から予想してたものの、
こうして足並みを揃えるのは、何だか凄く日本らしい(苦笑)。
とは言え、「ロシア語は敵性言語!」みたいな感じが見え隠れする事には、少し違和感も・・・・
それこそ以前にも書きましたけど、例えばハリコフなどは、住民の8割がロシア語話者であり、
現地読みでは、変更したハルキウよりも、変更しないハリコフの方が一般的なはずなんですよね。

まあ、その国の公用語読みに準じるというのも、1つの方法かも知れませんけど、
8年前の革命時、ロシア語を公用語から除外した事も、あまり褒められた行為だったとは思いませんし、
今回の停戦交渉においても、ロシア側は「ロシア語の再公用語化」を求めているくらいなので、
ロシアに同調しろとは言わないものの、ウクライナのロシア系市民に対しても、
もう少し、心配りをしても良いのでは?とは、個人的に感じるんですよね。

例えば、これと同じ要領で、もしも中国側が、
「今後、香港はホンコンと呼ばず、北京語でシャンガンと呼べ」とか言って来たら、
日本政府やマスコミ各社は、その通りにするんですかねえ?
香港の例が刺激的だとしたら、台湾の「高雄」とか、変更要請が来たらどうするのか?
未だに日本語読みでタカオと呼んでますけど、公用語である北京語読みだとガオションで、
現地の台湾語読みだとコォーヒョンですから、公用語重視なのか? 現地語重視なのか?

感情を基準に「これはこれ、それはそれ」とするのも、何だか微妙な気がしますし、
更に、感情的基準を、皆で足並みを揃えてとなると、尚更おかしな感じはするんですよね。
それこそ、東側の情報統制を批判するのであれば、自発的に統制しちゃうのは、どうなの?と。
要するに、マスコミであればこそ、報じる基準なんて自分たちで判断すれば良いと思うんです!!
もちろん日本の国民性を考えれば、そうなる事は理解できるものの、それが日本社会にとって良いかは別なので。

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